外国人運転手の日本語レベル緩和へ 進む日本の実質的移民政策と国体維持への課題

2025/05/29 更新: 2025/05/29

国土交通省は、外国人が日本でバスやタクシー運転手として働く際に必要とされる日本語能力の基準を緩和する方向で検討をしていることが分かった。大紀元の記者が、国土交通省の物流・自動車局/旅客課に確認したところ、これまで「特定技能」在留資格でバス・タクシー運転手を目指す外国人には、日本語能力試験(JLPT)で上から3番目の「N3」レベルが求められていたが、今後は1段階下の「N4」レベルでの入国を認める方向で調整しているという。運転手不足が深刻化する中、他業種より厳しい日本語要件が外国人受け入れの障害となっていたことが背景にある。

特定技能制度は2019年に導入され、介護や建設、製造業など幅広い分野で人手不足対策として外国人の受け入れを進めてきた。自動車運送業(バス・タクシー・トラック)は2024年3月29日の閣議決定で新たに対象分野に追加され、今後5年間で最大2万4500人の特定技能外国人受け入れを見込んでいる。

これまでバス・タクシー運転手にはN3レベル、トラック運転手にはN4レベルが求められていた。N3は「日常会話がある程度理解できる」水準、N4は「基本的な日本語を理解できる」水準とされる。バスやタクシーでは乗客との直接的なコミュニケーションが不可欠なため、より高い日本語能力が求められてきた経緯がある。

しかし、現場からは「N3は他業種よりも厳しい」「来日希望者のハードルになっている」との声が上がっていた。国土交通省は、こうした状況を踏まえ、N4でも入国を認めることで、より多くの外国人材の確保を目指す。運転免許の取得や新任運転者研修の受講など、他の安全確保策も引き続き義務付けられる。

実質的な移民政策が進む日本

日本はいつから移民政策を進める国になったのか?

日本政府は公式には「移民政策はとっていない」と繰り返し表明している。しかし、実態としては移民政策に近い内容が進行していると多くの専門家やメディアが指摘している。

まず、在留資格の拡大や緩和、特定技能制度の導入などにより、外国人労働者の受け入れが急増している。日本の少子高齢化を理由に労働力に担い手としての外国人労働者を増やしたいという日本政府の方針が背景にある。外国人労働者数はこの10年で2.5〜4倍に増え、2025年には230万人を超えて過去最多となっている。これは労働力不足を背景に、非熟練労働者を含む幅広い分野で外国人を受け入れている結果であり、受け入れ事業所数も過去最多を更新している。

明治大学・情報コミュニケーション学部の根橋玲子教授によれば、技能実習や留学生などは、表向きは「人材育成」や「国際貢献」を掲げつつ、実際には日本の労働力を補う役割を担っているケースが多く、たとえば「留学生30万人計画」や技能実習制度の拡充などは、事実上の「移民のサイドドア」と呼べると述べている。

さらに、特定技能2号の対象分野拡大や家族帯同の容認、永住や定住への道が開かれている点も、国際的な移民の定義(長期的に居住し、生活基盤を築く人々)に照らせば、実質的な移民政策とみなすことができる。

このように、政府は「移民政策ではない」と説明しつつも、現実には移民政策と同等の規模・内容で外国人の受け入れを進めている。専門家からは「言葉の使い方で国民の警戒心や不安を和らげようとしているが、実態は移民社会の現実に直面している」との指摘もある。

日本政府は公式には移民政策を否定しているものの、実質的には移民政策と呼び得る規模と内容で外国人受け入れを進めていると客観的に指摘できる。

「国体を守る」という観点

外国人の受け入れについては「国体を守る」という観点から大きな方針を定める必要性があるだろう。現状の日本では、移民政策や外国人労働者受け入れに関して、国家としての明確な基本理念や一元的な司令塔が不在であり、各省庁や自治体が個別に対応しているため、全体としての戦略や国民的合意が形成されていないという構造的な課題がある。

また、共生という理念のもとで多文化社会を目指す取り組みは進んでいるが、現実には「共生のプロセスが見えていない」「地域社会の将来像が描けていない」といった課題が指摘されている。言語や文化の壁、治安や生活習慣の違い、制度の不備など、現場レベルでの摩擦や不安も根強い。欧米諸国でも多文化共生政策の限界や社会の分断が問題化しており、日本でも同様のリスクが指摘されている。

さらに、移民政策が「なし崩し的」に進行している現状では、国民国家としてのアイデンティティや国体の維持に対するビジョンが不明確なまま、社会構造が大きく変容していく危険性があるとの警鐘も鳴らされている。国民的な議論や合意形成を経ずに移民受け入れが拡大すれば、社会の一体感や価値観の共有が損なわれるリスクも高まる。

現状の「共生」政策だけでは十分な解決策が見いだせていないのは事実であり、国体やナショナルアイデンティティを守るためには、国家としての基本方針や理念を明確にし、国民的議論を経て社会全体で合意形成を図る必要がある。制度や仕組みの整備、受け入れの範囲や条件、社会統合の具体的なビジョンなどを明確にしないまま進めば、日本の国体や社会の安定に大きなリスクを抱えることになる。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。
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