サイバーエージェントが情報統制下の中国で 中国SNS大手「Weibo」とアニメ展開で提携

2025/05/31 更新: 2025/05/31

株式会社サイバーエージェントは2025年5月28日、中国のソーシャルメディア「Weibo(新浪微博)」を運営するWeibo Corporationと、アニメおよびIP領域におけるマーケティングパートナーシップを締結したと発表した。

サイバーエージェントは2024年2月にアニメ&IP事業本部を設立している。今回の提携は、同社が手掛けるアニメ作品の中国市場での展開強化を目的としている。具体的には、Weibo上にサイバーエージェントのアニメ関連公式アカウントを開設し、アニメの話題を集約する特設ページや、ユーザーが交流できる掲示板の設置、グッズ販売、共同キャンペーンなどを実施する計画である。また、Weiboが主催するオフラインイベント「Weibo ACG World」や「微博文化交流ナイト」などでのコラボレーションも予定されている。

Weiboは2009年8月に運営を開始し、2024年末時点で月間アクティブユーザー数が5億9000万人を超える中国最大級のソーシャルメディアである。アニメやマンガ、ゲームなど二次元文化に関心を持つユーザーは3億2000万人を超え、国内外のアニメIP公式アカウントは1100以上、関連する会話量は月間10万件を超えているという。

サイバーエージェントは、グローバル市場を見据えたアニメ・IP事業の展開を進めており、今回の提携もその一環であると説明している。

中国のネット規制と海外コンテンツへの制約

中国のインターネット環境は中国共産党(中共)政権による規制や検閲が非常に厳しいことが知られている。Weibo上で発信される情報は中国当局の監視や検閲の対象となり、内容が制限されたり、削除されたりする可能性がある。また、政治的に敏感なテーマや中共政権にとって不都合な情報は公開できない場合があるため、表現の自由や情報の透明性に制約が生じる可能性がある。

さらに、Weiboはアカウントの乗っ取り被害が多く報告されている。日本企業や個人がWeiboを利用する際、セキュリティ対策が不十分だと、なりすましや情報漏えいのリスクが高まるとされている。

また、デジタル空間における情報流通の健全性についても懸念がある。中国のSNSプラットフォームでは、政府の影響を受けた偽情報の拡散や、組織的な世論操作が発生する事例が指摘されており、日本企業が巻き込まれるリスクも考えられる。

加えて、中国における海外コンテンツへの規制が年々強化されている。Netflixの共同CEOであるテッド・サランドス氏は2025年4月23日に開催されたSemafor’s World Economy Summitで「Netflixが中国進出を長年試みたものの、3年かけて1話たりとも中国の検閲委員会を通過できなかった」と明言している。日本のアニメ作品も検閲や配信制限の対象となる可能性があり、現地での展開が計画通りに進まないケースも懸念される。

米国の非営利団体フリーダムハウスが2024年10月に発表した「Freedom on the Net 2024」レポートによると、中国のインターネット自由度は100点中9点と評価され、ミャンマーと並んで調査対象72カ国中最下位であり、政府によるコンテンツ検閲が常態化している。評価項目は「アクセスの障害」「コンテンツの制限」「利用者の権利侵害」などであり、中国政府による検閲や言論統制、VPN利用者への罰則、特定ウェブサイトへのアクセス遮断などの実態が記載されている。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。
関連特集: 日本経済