ウイグル強制労働問題に日本企業34社が関与 グローバル制裁の抜け穴に

2025/06/01 更新: 2025/06/05

中国・新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)におけるウイグル人をはじめとするチュルク系民族への人権弾圧は、国際社会の重大な懸念事項となっている。特に、国家主導で行われているとされる強制労働は、世界のサプライチェーンに深く浸透しており、多くの国際企業がその加担を問われる事態となっている。

この強制労働は、単なる労働環境の問題にとどまらず、民族的・宗教的アイデンティティを理由とした恣意的拘束や拷問、強制不妊手術などを伴う体系的な人権侵害の一部であり、国連や欧米各国はこれを「ジェノサイド」、または「人道に対する罪」と認定している。

米国は上述の通りウイグル強制労働防止法を施行し、欧州でも2024年3月、強制労働に関与した製品の流通を禁じる規制案で暫定合意がなされている。さらに、BASFやフォルクスワーゲンといった大企業が現地事業からの撤退を決断している。

こうした中、2025年5月16日、日本ウイグル協会と国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」が衆議院議員会館で記者会見を開き、日本企業とウイグル強制労働の関係性について報告を行った。会見では、日本ウイグル協会が、日本企業35社と日本に進出する中国企業6社の計41社を対象に、ウイグル強制労働への関与に関する調査を実施した結果、83%にあたる計34社がなんらかの形で関与していることが判明したとしている。

同協会は、日系企業35社と日本進出の中国企業6社、計41社を対象に、ウイグル強制労働との関係性について新たな調査を実施し、各社が高リスク企業と関係を持っていないかを評価している。

その結果、現地で事業展開している1社、ウイグル強制労働の疑いがある企業と直接取引している(1次サプライヤー)8社、間に1社だけ挟む形で取引している(2次サプライヤー)10社、計19社が深刻な人権弾圧へ加担するリスクが極めて高いということが明らかになっている。具体的な企業名は以下の通り(※印が日本進出の中国企業)

●現地で事業展開している

・日立製作所

●ウイグル強制労働の疑いがある企業と直接取引している(1次サプライヤー)

・パナソニックオペレーショナルエクセレンス
・三菱自動車
・三菱電機
・シャープ(取引停止)
・丸久(取引停止)
・丸紅
・artience(旧称:東洋インキSCホールディングス)
・ジンコソーラー(JinkoSolar Japan Co., Ltd.)※
 

間に1社だけ挟む形で取引している(2次サプライヤー)

・パナソニック
・トヨタ自動車
・ホンダ
・三菱商事
・ユニクロ
・旭化成エレクトロニクス
・伊藤忠商事
・ネクスティ エレクトロニクス(旧トーメンエレクトロニクス)
・岩谷産業
・トリナ・ソーラー(Trina Solar Japan Ltd.)※
 

その他、間に2社以上の企業を挟む形で取引している

・ソニー
・東芝
・キヤノン
・オムロン
・京セラ
・ミツミ電機
・TDK
・良品計画(無印良品)
・しまむら
・伯東
・菱洋エレクトロ
・BYD(日本法人)※

・JAソーラー(JA Solar Japan Co., Ltd.)※

 

日本政府は具体的な制裁措置を講じておらず、大部分の企業も人権デューディリジェンスの観点から十分な対応を示していない。

国連人権理事会が2011年に承認した「ビジネスと人権に関する指導原則」では、企業がサプライチェーンを含めた事業全体に対して人権尊重責任を持つことが明確にされている。ウイグル強制労働は国家主導の人権弾圧であり、たとえ間接的であっても、それに加担することは人道に対する罪への関与とみなされかねない。

現在、日本が制裁逃れの「抜け穴」として世界の注目を集めつつある。この状況を放置すれば、日本企業は国際的信用を失うばかりか、日本そのものが人権問題への不作為を問われるリスクを負うことになる。

ウイグル問題に対する国際的な関心と対応が加速する中、日本に求められるのは、透明性のある調査体制の整備、企業への明確な法規制、そしてサプライチェーン全体を見渡した人権尊重の徹底だ。日本企業と政府が今後どのような行動を取るのかが、国際社会から厳しく問われている。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
関連特集: 社会