大阪・勝尾寺の達磨アートを中国人観光客が破壊した事件は、日本人に強い違和感を残した。
台湾を象徴する奉納物を意図的に破壊し、幼い子どもの前で破壊行動を続けた中国人観光客の姿は、多くの人が理解しがたいものだった。
前回の記事では、専門家・唐浩(タン・ハオ)氏が「中国では小学生の頃から『台湾は敵』『日本は敵』『アメリカは敵』といった敵視教育が繰り返される」と指摘した。
これに対し、読者から次の疑問が寄せられた。
「そんな教育を受けているなら、なぜ日本に来たがるのか?」
この問いは、日本だけでなく欧米の読者にも共通する率直な疑問である。
そこで今回、この問題について唐氏に改めて聞いた。
【専門家コメント(唐浩氏・翻訳)】
この疑問を理解するには、中国人の中に形成される二つの感覚、「党性」と「人性」を区別する必要がある。
■党性とは
共産党が学校教育やメディアを通じて外側から植え付ける政治的価値観である。
『日本は敵』『党に従うことが正しい』といった態度を示すことが安全とされ、逆らえば不利益を被ったり、周囲から異様な目で見られる。
そのため、多くの人は公の場でこの党性に合わせて行動する。
■人性とは
人が生まれながらに持つ自然な良心や健全な感覚である。
安全な社会を求め、礼儀正しい人々を好み、より良い生活環境に惹かれる。こうした「人として当たり前の感覚」が人性である。
中国人にはこの二つの顔が同時に存在するため、表では反日的な言葉を口にしながら、心の中では日本の生活の良さを認めるという矛盾が生まれる。
つまり、表では党性に合わせて反日的な言葉を口にしながら、心の中では人性の側が日本社会を評価し、行動では日本を選ぶという現象が起きるのである。
実際に日本を訪れた中国人の多くは、現実を見て「党の宣伝と違う」と気づき、人性が目を覚ます。しかし中国に戻れば、再び党性の顔を使わざるをえない。
この構造が、外国人から見るとチグハグな行動に映る理由である。

この現象をどう受け止めるべきか
中国人が時に理解しがたい行動を取ってしまう背景には、本人の性格だけではなく、長年の政治環境によって“そう振る舞うしかない”状況に追い込まれている現実がある。しかし、その結果として世界の多くの国で誤解され、警戒され、嫌われているのも事実である。
皮肉なことに、これは中国人本来の姿ではない。歴史を見れば、中国には礼を重んじる文化も、人を思いやる伝統もあった。それを弱らせ、代わりに敵意や警戒心を植え付けてきたのが現在の体制である。
こうした教育を受け続ければ、海外で普通に立ち振る舞うことすら難しくなり、結果として世界から距離を置かれてしまう。
そして行き場を失った人々は、結局また祖国の体制の中へ戻らざるをえなくなる。
最も大きな代償を払っているのは、実は一般の中国人自身である。
今回の勝尾寺の事件も、その長い影の一端にすぎない。
私たちができるのは、「この行動はどこから生まれたのか」と一歩引いて考える視点を持つことだろう。
そして忘れてはならないのは、こうした問題の根には中国共産党(中共)の長年の思想教育があるという点である。
もし政治的な刷り込みから離れ、本来の人性に沿って生きられるようになれば、中国人自身の道徳やふるまいは大きく変わる可能性がある。
そうなれば、海外で起きる衝突も減り、日本を含め世界の社会に広がる不安や危険も小さくなるだろう。
つまり、この問題は「関係ない他国の話」ではない。
中国の人たちがどう育ち、どう考え、どのように行動するかは、結果的に私たちが暮らす日本社会にも影響を及ぼす。
だからこそ、背景を知ることには意味がある。
理解は、同情ではなく、安全と安定のための知識である。




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