東京サンフランシスコ間が6時間 超音速旅客機解禁へ =トランプ大統領

2025/06/07 更新: 2025/06/07

2025年6月6日、ドナルド・トランプ米大統領が、米国の超音速航空規制を大幅に緩和する大統領令に署名した。これにより、アメリカで長年禁止されてきた「音速超え」の旅客機による国内上空飛行が解禁され、次世代超音速旅客機の開発が一気に加速する見通しである。

規制撤廃と新たな基準

今回の大統領令は、連邦航空局(FAA)に対し、1973年から続いていた「米国本土上空での超音速飛行禁止」を撤廃するよう指示している。さらに、騒音に関する新たな認証基準の策定や、その他関連規制の見直しも命じられている。今後は「地域社会の受容性」「経済的合理性」「技術的実現可能性」を考慮した騒音基準が導入される予定である。

民間超音速機の本命

この政策転換の最大の恩恵を受けるのが、米コロラド州のスタートアップ「Boom Supersonic」だ。同社は現在、最大80人乗りの超音速旅客機「Overture(オーバーチュア)」を開発中である。巡航速度はマッハ1.7(時速約1,800km)、サンフランシスコ~東京間を約6時間で結ぶことを目指している。現行の旅客機では約10時間15分かかるため、飛躍的な短縮となる。

Boom社は2024年に1/3スケールの試験機「XB-1」で音速突破に成功し、2029年の商業運航開始を目指している。すでにアメリカン航空、ユナイテッド航空、日本航空などから多くの注文・予約を獲得し、量産体制も整備中だ。

「BooM」は現実に?

超音速機最大の課題は「ソニックブーム(衝撃波音)」による騒音であったが、Boom社は「ブームレス・クルーズ」技術を開発している。これは高度や速度、気象条件を精密に管理することで、地上に可聴な衝撃波音が届かないように飛行するものである。実証機XB-1の試験でも、音速突破時に地上で音が検知されなかったと報告されている。

世界の空はどう変わるか

今回の規制緩和により、米国内のニューヨーク~ロサンゼルス間が4時間未満、サンフランシスコ~東京間が6時間など、従来の半分以下の時間で移動できる時代が現実味を帯びてきた。今後は国際基準の調整や、さらなる騒音・環境対策も課題であるが、「BooMが来る️!」というネット上の声も、決して大げさではない。

日本の状況

日本でも超音速旅客機の開発は活発だ。JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、静粛性や燃費に優れた次世代超音速旅客機の研究開発を長年にわたり推進しており、機体設計やソニックブーム(衝撃波音)低減技術の実証、概念機体の設計など具体的な成果を積み重ねている。例えば、マッハ1.6で50人乗り、航続距離約6,300kmの小型超音速旅客機を想定した設計研究や、実証機による飛行試験も行われている。

また、JAXAを中心に日本航空機開発協会(JADC)、日本航空宇宙工業会(SJAC)、三菱重工業、川崎重工業、SUBARU、IHIが共同で「Japan Supersonic Research(JSR)協議会」を2021年3月31日に設立し、2030年代の国際共同開発や商業化を見据えた技術ロードマップ策定、国際協力体制の構築を進めている。

超音速旅客機の実用化は、移動の常識を根本から変え、世界をより近く結びつける可能性を秘めている。今後の技術進化と国際協力が注目される。

大紀元エポックタイムズジャパン記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。