中国で経済の低迷が長期化する中、破産制度の裏をかく「新商売」が注目を集めている。
実際には借金をしていないにもかかわらず、企業の「身代わり」となって巨額の債務を背負い、破産申請を行って報酬を得る「借金代行人(中国語:職業背債人)」という存在が、静かに広がっているのだ。
たとえば、中国の裁判所が公表した以下の2つの事例で、広東省・深センでの月収合計約24万円の高齢夫婦が約24億円の債務を申告して破産を申請し、別の女性(37歳)も月収約9万円ながら、約5億円の負債を抱えているとして破産を申し出た。
これら事例では、破産を申請した人物の収入と負債額の差があまりにも大きく、明らかに常識では考えられないものである。そのため、この2つのケースが公表されると、世間から強い疑問の声が上がった。その後、調査により、他人の借金を肩代わりする「代理人」のような存在が浮かび上がってきた。
企業オーナーが法的責任から逃れるために法人名義を別人に移し、その「名義人」に報酬を支払って破産を代行させるという構図だ。代行者は、債務額の5~30%を「報酬」として受け取るケースもあったという。
さらに、教育や美容業界などでは「閉店処理専門業者(中国語:職業閉店人)」まで現れた。前払い契約が多い業種で、法人変更や顧客対応を肩代わりし、経営者が「夜逃げ」しやすい環境を作る役割だ。こちらも費用は債務総額の10~30%という。
専門家らは、こうした行為が単なる脱法ビジネスではなく、社会の信用基盤を根底から揺るがしていると警鐘を鳴らす。
カナダ在住の元弁護士・賴建平(らい けんぺい)氏は、「中国の社会では『騙した者勝ち』が常識になりつつある」と指摘し、「どんなに厳しい状況でも、個人の信用と社会的責任だけは失ってはならない」と呼びかけた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。