中国EV大手BYDのメキシコ工場建設計画が、トランプ政権の関税強化や米中対立の影響で白紙に戻された。メキシコ政府はアメリカとの関係を重視し、中国企業への投資認可を見送ったのだ。
アメリカとの関税交渉が難航する中、メキシコ政府は、対中政策において、強硬な姿勢を取り、中国の電気自動車大手BYD(比亜迪自動車)による工場建設計画を拒否した。BYDの幹部も、メキシコでの新工場建設を見送る決定を下した。
BYDは当初、メキシコに新たな生産拠点を設置する計画を立てていたが、メキシコ政府はこれを認めなかった。背景には、トランプ政権との関税交渉の停滞と、それに伴う対中関係への警戒感がある。こうした状況の中で、BYDのメキシコ進出計画は、事実上白紙となる見通しだ。
報道各社の情報によれば、アメリカ政府は、メキシコ政府に対して圧力を加え、公有地の売却、税制優遇、進出企業への補助金支給などの手続きについて、決定を先延ばしさせ、これにより、BYDのメキシコ工場建設計画は、厳しい局面を迎えた。現在も米墨間では、関税に関する交渉が継続中であり、鉄鋼輸入関税の50%削減が主要な争点となっていた。
ブルームバーグは、BYDの執行副社長リー・コー氏が7月1日に、ブラジルで行われた新工場開業式典において、「会社はアメリカ大陸での事業拡大に引き続き関心を持っているが、新たな投資の具体的なタイムテーブルはまだ定まっていない」と語ったと伝えた。
リー氏はまた、「地政学的リスクが自動車産業に大きな影響を及ぼしており、各社は戦略の見直しを迫られた。状況が明らかになった時点で、投資判断を下したい」と述べた。
同報道では、各国の自動車メーカーが変動する貿易政策や地政学的緊張に直面しており、EV業界全体がかつてない不確実性の中で対応を迫られていると指摘した。
今年4月から、アメリカ政府は、輸入自動車に対する25%の関税措置を発動した。ただし、メキシコで生産した車両は米墨加協定(USMCA)の原産地規則を満たしていれば、関税免除の対象となる。これを満たさない車両には25%の関税が適用される。
トランプ大統領は選挙戦中、「中国製自動車のアメリカ市場への流入をメキシコ経由で許すわけにはいかない。あらゆる関税措置を講じて阻止する」と明言した。
今年3月、トランプ政権がメキシコとカナダに関税を課した際、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は「BYDはまだ正式な投資提案を提出していない」と語り、このプロジェクトの将来にさらなる不透明感をもたらした。
さらにメキシコ政府は、中国からの少額輸入品に対する関税を新たに設定し、中国製日用品に対する規制を強化するなど、中国企業への圧力を強めた。
一方、中国共産党もBYDの海外進出、とりわけメキシコでの計画に対して慎重な立場を取っており、この姿勢も計画停滞の一因だ。
英フィナンシャル・タイムズは今年3月、BYDのスマートカー技術がアメリカに流出する可能性を警戒した中共政府が、メキシコ工場建設に関する承認手続きを意図的に遅らせていると報じた。また、同紙は中共政府が「一帯一路」構想を軸に、インフラ事業を優先しており、BYDの海外工場への関心が相対的に低下しているとの見方を紹介した。
2024年9月に、ブルームバーグがに報じたところによれば、BYDは、メキシコ国内で3つの候補地を選定したが、アメリカ大統領選の行方を見極めるため、最終的な判断を保留したという。
同年12月、さらに、ブラジル政府がBYDの現地工場建設を一時停止させ、同社は労働環境に関する「奴隷労働に等しい」との訴訟にも直面した。こうした問題が、BYDのグローバル展開に深刻な影響を与えている。
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