中共は19世紀にロシアに割譲された領土の奪還を狙っているのか?

2025/07/23 更新: 2025/07/23

昨年9月1日、『キャサリン・チャンのビュー』のインタビューで、台湾の頼清徳総統は、中国共産党(中共)が台湾を併合しようとしているのは「領土的一体性」を守るためではないと述べた。頼総統は、中共の行動は、軍国主義的な拡張主義の表れだと分析した。

中共の動機に疑問を呈する中で、頼総統は、近代史の重要な一幕を持ち出し、「もし本当に領土の一体性が目的なら、なぜ(中国は)アイグン条約で割譲されたロシア支配の土地を取り戻そうとしないのか?」と問いかけた。これは、1858年に清朝が署名し、満州の約60万平方キロメートルをロシア帝国に割譲した条約を指す。この面積は、台湾(約 3万6197 平方キロメートル)の約16.57倍にあたる。

インタビューの中で頼総統は、中国の台湾併合の動機は「ルールに基づく国際秩序の変革」と「西太平洋および国際社会での覇権の確立」にあると語った。あるロシアの諜報文書によると、中国から大量の軍事物資援助を受けているにもかかわらず、ロシアは中国を「敵」と見なし、ロシアの主要な情報機関であるFSBはその文書の中で、「中国の学者たちが、ロシア領に対する領有権主張の土台を築いていることを恐れている」と述べたと、デイリー・ミラー紙が報じた。この文書では、表面的には友好関係に見える両国の間で、陰では「緊張し、急速に進展する」諜報戦が展開されているとした。

現在のウクライナ戦争との関連

中国はしばしば、1839~1949年頃の「屈辱の世紀」に言及し、これは中国国内のナショナリズムを煽るためのスローガンとして使われ、この「世紀」は、植民地列強による中国へのアヘン戦争から始まった。ロシアもまた、戦争と強制的な領土割譲を通じて、中国の広大な地域を占領することで、その役割を果たした。アレクサンダー・モーティル教授は、19世紀の中国の損失についての論文で次のように述べた。

「ロシアの領土拡張は、西洋の帝国主義諸国が中国に干渉し、中国を西洋の属国に変えていた時期と一致していた。抵抗する力を失っていた清朝は、主権と領土の多くを外国に明け渡した。この状況を、毛沢東が何十年もかけてようやく覆した」

モーティル教授はさらにこう続け、「ロシアが不法に獲得した領土の返還を中国が要求することは、19世紀の帝国主義によって受けた屈辱をただ覆すだけではない。重要なのは、それがプーチン政権自身の歴史的な主張と整合する行動でもあるという点だ。モスクワがウクライナ、ベラルーシ、その他の地域を『歴史的にロシアの領土』だと主張できるのであれば、北京もロシア連邦の極東地域の大部分を『歴史的に中国の領土』だと主張することができる」と、述べた。

ロシアへの武器供給を行う一方で、中国は制裁対象のロシア産天然ガスや石油を違法に購入して、エネルギーを確保し、もしロシアが支配する資源豊富な中国の旧領土を取り戻せば、中国は仲介者を排除して、自国のエネルギー源に直接アクセスできるようになる。

中共にとって台湾かロシア極東か どちらが現実的か?

「中国は、台湾ではなくシベリアを侵略する」と題された記事では、中国にとってどちらがより実行可能かについての論理的な問いが提起された。確かに中国は、台湾への海上封鎖や侵攻能力の誇示・演習を繰り返し、海軍力を大幅に強化してきた。しかし実際には、中国は強制上陸作戦のような複雑な水陸両用作戦を実行した経験がない。ドイツ軍は1940〜41年にかけて、イギリス本土への侵攻を目的に大規模な空襲や準備を行ったが、結局25マイルの英仏海峡を越えることすらできなかった。

台湾海峡は少なくとも100マイルの幅があり、毎年5~11月頃は台風シーズンが長く続く。台湾は、ハープーン対艦ミサイル、M1戦車、そして中国本土の飛行場や港湾、水陸両用部隊の集結地にまで到達可能な長距離HIMARSロケットの配備によって、軍事力と防衛能力を強化した。仮に中国が上陸部隊の集結を開始した場合、中国の港湾では数週間にわたる準備期間が発生し、その間は兵站が集中し、最も脆弱なタイミングとなるはずだ。

戦略国際問題研究所(CSIS)が2023年に行ったウォーゲームの結果によると、アメリカと台湾側も多大な損失を被るが、中国は、台湾侵攻に失敗するという結論だった。だからこそ、中国の軍事計画立案者たちは、軍事侵攻における投資対効果が最も高い、直感的な選択肢として、ロシアが支配する警備の手薄な、鉱物資源豊富な旧中国領に注目する。

中共指導部の不安定さも影響要因

先月のエポックタイムズのインタビューで、アメリカ在住の学者・評論家である吴祚来(ごそらい)氏は、中国指導部の現状について見解を述べた。記事によると、「呉氏によれば、2024年7月に開催された中国共産党第三回全体会議以降、習近平の核心的指導力が著しく弱まり、改革派や穏健派による新たな内部勢力が出現している」という。

呉氏は「現在、一時的に形成された中央集団が、実質的に習近平の権限を排除しているように見える」と語った。

中国問題の専門家ゴードン・チャン氏も、中国政府の不安定さについて次のように述べている。「混乱状態にある政権(中国)には、台湾本島への侵攻のような大規模な軍事作戦を開始するために必要な計画性や結束力はおそらくない。とはいえ、安定した政権よりもむしろ紛争に発展する可能性は高い」と述べている。

中国国内の指導力の空白は、トランプ政権が革新的な外交戦略を打ち出すチャンスかもしれない。呉氏は、現在中国との貿易交渉に取り組んでいるトランプ政権にとって、台湾の国連加盟を推進するなど、大胆な行動に踏み出すべき時ではないかと提言した。

ジョン・ミルズ大佐(退役)は、冷戦、平和の配当、対テロ戦争、混沌とした世界、そして現在は大国間の競争という 5 つの時代に勤務した国家安全保障の専門家です。彼は国防総省のサイバーセキュリティ政策、戦略、国際問題担当の元ディレクターです。ミルズ氏は、安全保障政策センターのシニアフェローです。彼は「The Nation Will Follow」と「War Against the Deep State」の著者です。ColonelRETJohn2 on “X”、ColonelRETJohn on Substack、GETTR、およびTruth Social
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