中国・四川省成都市の国際空港駐車場で7月24日、同国の電気自動車(EV)大手・BYDのネット予約タクシーが駐車場内を延々と旋回し続ける異常事態が発生した。負傷者こそ出なかったが、騒動の様子はSNSで瞬く間に拡散され、中国産EVの安全性や、事故に対する当局・企業の対応に批判の声が高まっている。
「暴走」が起きたのは成都天府国際空港の屋外駐車場。問題の車両は、BYD製の高級EVセダン「漢(ハン)」で、通路を止まることなく、かなりのスピードで走り回り、目撃者によればブレーキが利かず、30〜40周以上も延々と旋回していたという。車両がカーブを曲がるたびに、タイヤと路面が激しく擦れる音が響き、現場には多くの人が集まって騒然となった。市民の間には不安と困惑が広がり、異様な光景に息を呑む様子が見られた。
通報を受け、消防・救急・警察が出動したが、その場で車両を止める手段はなく、最終的にメーカーによる遠隔操作でようやく停止。運転手は強いショックを受け、呆然とした状態で病院へ搬送された。幸い、現場では人的被害は確認されていない。
SNSでは「旋回できるだけの空間があって本当に幸運だった」という安堵の声の一方、「制御不能の車が普通に走ってるなんて怖すぎる」といった不安の声も相次いだ。
(駐車場で延々と旋回し続けるBYD車、いわゆる「旋回地獄」の実録映像)
同日、中国SNS・ウェイボーでは「BYD暴走」がトレンド入りし、「これは制御不能ではないか」という疑念がネット上に急速に広がった。これを受けて、現地の公安当局は「運転手の蒋(40歳男性)は、乗客と連絡が取れず感情的になり、駐車場内を走り回った。検査の結果、飲酒運転や薬物使用は確認されなかった」と発表。あくまで一個人による単発的な行動とし、車両側の不具合の可能性は否定された。
しかし、この発表に対してネット上では疑念と反発が噴出。「感情的になったからって、駐車場を40周も冷静に旋回するなんてあり得るか?」「車両故障を隠すつもりか!」と怒りの声が相次いだ。
実際、近年の中国では国産EVによる事故が後を絶たない。一方で、中共政権はEV産業を「国策」として巨額の補助金を投入して推進しており、こうしたネガティブな報道や個人の発信は、しばしば厳しく統制される。
今年5月には、BYD車の不具合についてSNSで苦言を呈したユーザーが「名誉毀損」の容疑で拘束される事件が発生しており、国産EVを守るための「言論封殺」が実際に行われている実態も再び注目されている。
今回は奇跡的に犠牲者を出さなかったものの、「次は誰かが巻き込まれるのでは」との不安が広がっている。

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