米豪が共同で新型長距離ミサイル開発 インド太平洋地域の抑止力強化へ

2025/07/27 更新: 2025/07/27

7月25日、アメリカ陸軍はオーストラリア北部準州にある「マウント・バンディ訓練場」において、最新の精密誘導ミサイル「PrSM(Precision Strike Missile)」の試射を実施した。これは、同型ミサイルとして初めて国際日付変更線の西側で行われた発射であり、米豪両国が連携してインド太平洋地域での長距離打撃能力を高め、抑止力を強化しようとする動きの一環とされる。

陸海の目標を正確に攻撃 新型ミサイル「PrSM」とは

PrSMは、アメリカ主導で開発され、ロッキード・マーチン社が製造を担当する新世代の長距離誘導ミサイルである。オーストラリアも開発パートナーとして、生産や整備、今後のアップグレードに協力していく計画だ。

このミサイルは、現在のところ最大射程500キロメートル以上とされているが、将来的な改良により1千キロメートルを超える性能も見込まれている。また、最新のセンサーや新型弾頭の搭載も可能な設計となっており、アメリカ陸軍が現在使用しているATACMSシステムの後継と位置づけられている。

PrSMは、陸上の固定目標だけでなく、海上の移動目標にも高精度で攻撃可能であり、オーストラリアが進める「長距離精密打撃力」の構築において中核的な兵器となる見通しである。

ミサイルはモジュール式の設計で、1つの発射ユニットに2発搭載可能。既存のM270A2やHIMARS(高機動ロケット砲システム)にもすでに統合されており、展開の迅速性と高い弾薬搭載能力は、多領域戦の戦場に適しているとされる。

4月の実験では複数目標に命中

今年4月には、アメリカ・ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場で、M270A2発射車からの実弾試験も行われた。この試験では、地上レーダーや回転翼機など複数の目標に命中し、短距離かつ複雑な状況下においても高い機動性と命中精度があることが確認された。

試射は当初予定より2年早く実施 豪州の能力向上を加速

今回の試射は、オーストラリア国防軍がHIMARSを使用して実施したもので、当初予定より2年早いスケジュールで行われた。ミサイル本体と発射車両も前倒しで納入されており、オーストラリア陸軍の戦力強化が急ピッチで進んでいることがうかがえる。

オーストラリア国防省は、今回の試射を「両国の技術統合の進展を示すもの」と位置づけている。昨年には米豪間で覚書が交わされ、PrSMの共同生産・整備・開発が正式にスタートしており、2025年には共同プロジェクトオフィスの設立も予定されている。今年後半には量産に関する追加契約も結ばれる見通しだ。

アメリカ国防長官のピート・ヘグセス氏は今年6月、「PrSMプロジェクトは、アメリカが外国領土で実施する初めての長距離打撃兵器計画であり、共同開発を歓迎する」と述べた。

中国を意識した軍事的メッセージか

米FOXニュースの報道によれば、今回の試射は、緊張が高まるインド太平洋情勢を背景に行われたものであり、中国への抑止力強化を狙った軍事的メッセージであるとされている。

オーストラリアの国防産業相パット・コンロイ氏は、「今回の試射は、政府が推進する国防力の近代化において、極めて重要なマイルストーンだ」と強調。HIMARSとPrSMの早期導入・試験は、オーストラリアが未来型の国防戦力を急速に構築しようとしている証拠であり、「陸軍の長距離打撃能力を25倍に引き上げることが目標だ」と述べた。

 

陈霆
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