8月7日、豪雨に襲われた中国河南省鄭州市は広範囲で冠水した。主要道路や地下隧道は瞬く間に濁流と化し、車両は水に浮き、歩行者が流されそうになる場面も相次いだ。
市当局は豪雨警報の最高レベルである暴雨赤色警報を発令し、生産・営業・授業・公共交通を全面停止、全ての集団屋外活動も中止したが、市民からは「なぜ毎年、同じ時期に同じ惨事を繰り返すのか」と怒りが噴き出している。
(洪水に見舞われた鄭州市、2025年8月7日、中国河南省)
地元住民によれば、東に行くほど浸水が深刻になり、場所によっては車全体が水没、別の場所では屋根だけが見えるという。近年の異常気象は顕著で、つい先日まで干ばつ警報を発表していた同市が、わずか数日後には豪雨警報を出す事態となった。
自然災害か人災か──その境界が曖昧な国では、天気予報よりも当局の動きが市民の命運を左右する。とくに注目を集めたのは、2021年の大水害で多数の死者を出し「死のトンネル」と呼ばれた京広路トンネルだ。

同トンネルは今回も浸水し、ドライバーは「10分で水が車窓まで達し、車が浮き始めた」と証言。暗く水に沈んだ隧道内では、多くの車が立ち往生し、Uターンや脱出が相次いだ。2021年の洪水災害時、この4.3キロの隧道からは少なくとも1,200台以上の車が引き揚げられたが、死傷者数は今も隠蔽されている。
(「死のトンネル」と呼ばれた京広路トンネルが冠水した当時の様子。2025年8月7日、中国河南省鄭州市)
2021年の水害では、豪雨に加え無告知の水庫放流が重なり、地下鉄5号線で14人、京広北路隧道で6人が死亡したと公式発表された。しかし、市民の間では「実際の犠牲者ははるかに多い」との見方が根強い。
相変わらずの情報統制の中、街には不安と緊張が広がり、SNSには「7・20(2021年大洪水)の悪夢が戻ってきた」「当時の教訓はどこへ消えたのか」との嘆きがあふれている。
被災者の嘆きが消えぬまま、またも水に沈んだ街──「なぜ学ばない?」という問いに答えない限り、この悪夢は何度でも繰り返される。

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