日本では夏祭りや特別な行事で花火が上がるが、中国では日常的な祝い事にも小規模な花火が使われる。今回、その火花が夜空を彩った理由は、ある高官の失脚だ。
時は8月8日夜。縁日でもないのに、山東省徳州市・斉河県の街は爆竹と花火の轟音に包まれた。これは、市民が自発的に開いた「県トップの失脚」を祝う異例の祝賀だった。

山東省の規律監査機関は同日、県委書記(県トップ)の孫修煒(そん・しゅうい)が重大な規律違反と違法行為の疑いで調査を受けていると発表した。事実上の失脚宣告である。
孫は2020年末に着任し、4年間で不可解な事業や不祥事を重ねた。中でも象徴的なのが、全市の街灯や交通設備を黒塗りにするという前代未聞の指令である。費用と労力を浪費しただけで何の意味もなく、市民の失笑と怒りを買った。さらに、放置された公共工事や財政局庁舎火災、公務そっちのけの私的交際など、批判の的となる行為が続いた。

地元SNSには「仕事しないで女遊びばかり」と揶揄する投稿や、失脚を喜ぶ替え歌・詩まで溢れた。さらに、孫と「特別な関係」にあったとされる美貌が話題となっていた女性部下も同時に当局に連行されたとの情報が流れ、噂は一層広がった。公式な裏付けはないが、複数の関係者が証言している。
孫の失脚が伝わった夜、夜空に火花が次々と咲き、街には笑い声と爆竹の轟音が響いた。その一発一発に、市民は鬱憤と「腐敗を終わらせたい」という願いを込めた。爆竹がやんだ後に残ったのは、腐敗政治への嫌悪と切実な変革の思い。失脚を祝う花火は、中国社会に積もる不満の火種をも照らし出していた。

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