激変する中国 経済不安とモラル崩壊が生む「群衆略奪」の連鎖

中国のスーパーと畑で略奪行為 経済失速で崩れる秩序と倫理「スーパーマーケットで消えたドリアン60箱」

2025/08/26 更新: 2025/08/26

経済の失速と不安な心理が渦巻く中国社会で、スーパーや畑に「群がる」人々の姿が近年、増えている。

最近、山西省汾陽(ふんよう)市で行われた新規スーパーの開業イベントが、思わぬ「修羅場」と化した。特価で販売されたドリアンを客が次々に割ってその場で食べ始め、わずか1日で約60箱が消えたのである。残されたのは無数の殻と、途方に暮れる経営者の姿だった。

8月21日、スーパー「発到家」が用意したのは、1個9.9元(約220円)の格安ドリアンだった。だが、混雑に乗じて未会計のまま食べる客が相次ぎ、高級フルーツまでもが「ひとかじり」されて棚に捨てられる始末。店側は人員不足で制止できず、経営者は「約60箱のドリアンが食べ尽くされた」と打ち明けた。ネットでは「恥知らず」「子供が真似する」「モラル低下もいいところ!未会計で食べるなんて信じられない」といった声が相次ぎ、映像は多くの人々に衝撃を与えた。

この光景は一度きりの出来事ではない。2024年9月、河南省商丘(しょうきゅう)市のスーパーでは「倒産の噂」で群衆が殺到。会員カードが無駄になると恐れた人々が商品をその場で飲み食いし、店内は「嵐の後」のように荒れ果てた。さらに広東省潮州(ちょうしゅう)市では、路上の商品が大勢に奪われ、松葉杖の老婆まで加わる異様な光景が監視カメラに残された。

 

略奪集団に加わる「松葉杖をついた老婆」。広東省潮州(ちょうしゅう)市で2024年8月22日午後、路上の商品が大勢に奪われる異様な光景が監視カメラに記録された(SNS映像より)

 

「なぜ頻繁にこんなことが起きるのか」「中国は一体どうなってしまったのか」。こうした疑問の声が後を絶たない。実際、略奪はスーパーや街中に限られない。いまや各地の畑でも起きている。

河南省南陽(なんよう)市では2023年11月、農村の穀物畑で住民が集団略奪を行い、作物を盗んだ挙句に持ち主を罵るという信じがたい光景が広がった。「あなたたちは恥知らずだ!」「恥知らずなのはお前だ!」と罵り合う姿は、道徳観念の崩壊を象徴していた。

 



盗まれる大地 中国で続発する「集団略奪」 農業被害

群衆には罪を問えぬ? 中国・安徽省で東京ドーム約7個分に相当するジャガイモ畑が収穫期を前に住民によって集団で略奪される事件が発生、現地警察の信じられない対応は…?

 

中国政法大学出身で国際法を専攻した専門家の頼建平氏(米国在住)は、エポックタイムズの取材にこう指摘している。「窃盗事件は社会全体の問題であり、根源は共産党の理念と統治にある。共産党自身が民衆を搾取し、財産を強奪している。その『悪のお手本』を見ながら暮らす庶民が、同じことを繰り返すのは必然だ」。

 

一部の市民による「集団略奪」が起きたスーパーマーケット、中国河南省商丘市柘城県、2024年9月4日(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

現地警察も「法不責衆(ほうふせきしゅう)」を理由に見て見ぬふりをし、ときには村ぐるみで略奪者をかばい、励ます例すらある。

なお「法不責衆」とは、本来「違法でも大勢でやれば法律の手が及ばない」という意味だ。言い換えれば「皆でやれば捕まらない」という発想である。その考えが中国社会に深く染み込み、スーパーや畑を荒らす群衆心理となって噴き出している。

 



盗まれる大地 中国で続発する「集団略奪」 農業被害

群衆には罪を問えぬ? 中国・安徽省で東京ドーム約7個分に相当するジャガイモ畑が収穫期を前に住民によって集団で略奪される事件が発生、現地警察の信じられない対応は…?

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
関連特集: 激変する中国