中国の地方政府が出すお役所の書類が、他地域の文章を丸写しして作られていたことが次々と明らかになっている。
たとえば、山西省五台県の調査報告は、数日前に別部局が発表した文章とほぼ同じ内容(全文約390字のうち320字以上が重複)。広西チワン族自治区(以後:広西)平楽県の森林防火計画に至っては、500キロ離れた湖南省安化県の地名や川のデータをそっくり流用し、「平楽(広西)が安化(湖南省)を指導する」というあり得ない一文まで堂々と掲載された。笑い話のようだが、これは日常的な現象にすぎない。
役所で働く複数の職員によれば、「同じ書類が、すぐに別の役所名で出てくるのは当たり前」
新人はネットから「聞こえのいい言葉」を拾って数字だけ差し替え、体裁を整えるのだ。調査報告も、実際は写真数枚と短いコメント程度しかなく「他省のサイトから探して貼れ」と上司が指導することすらある。こうして量産された書類は、地名や数字が間違っていても堂々と公開される。露見しても「書類のケアレスミス扱い」で終わり、責任はほとんど問われない。
中国の末端役所で横行する“コピペ書類”の実態は、一部の中国メディアですら無視できなくなっている。北京大学政府管理学院の白智立(はく ちりつ)教授は「盗用は政府文書の権威と信頼を損ない、政策の実行力を弱める。形式主義や官僚主義の広がりは、政府の行動が歪み、本来の役割を果たせていないことを示している」と指摘した。
いっぽうで現場では、内容よりも「書類を出すこと」自体が目的となり、中身のないコピー書類だけが山のように積み上がり、現実の問題は置き去りにされている。
形式主義に染まったお役所書類は、一見きらびやかな言葉で飾られても中身は空洞だ。Ctrl+CとCtrl+Vで統治はできても、失われた信頼は二度とコピーできない。

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