ロシア・ウクライナ和平交渉が停滞  ポーランド侵入の無人機を撃墜

2025/09/15 更新: 2025/09/15

ロシアとウクライナの和平交渉は、先週ひとます休止符が打たれたようだ。ロシアは従来通りウクライナ各地の主要都市に対して大規模な攻撃を行い、その中で数百機の無人機のうち19機がポーランド領空に侵入した。これらの無人機はポーランド軍とNATOの戦闘機によって撃墜され、ヨーロッパ各国は直ちにロシアの挑発行為を強く非難した。

クレムリンは攻撃を否定するとともに、ロシア・ウクライナの和平交渉について「終了」ではなく「休止」が正確な表現であると主張した。アメリカは欧州諸国に対し、ロシア産エネルギーの購入を停止するよう求めるとともに、中国やインドに対しては高関税を課すことでロシア経済に打撃を与えるよう呼びかけている。トランプ大統領はFOXニュースの取材に対し、プーチン大統領への忍耐は限界に近づいていると述べた。

ロシアのプーチン大統領は先々週、ウクライナのEU加盟に反対しない考えを表明したが、先週に入り砲撃は一層激化し、首都キーウの政府庁舎も被害を受けた。

ドニエプル川中流のクレメンチュークでは停電が発生し、鉱業都市クリヴィー・リフでも多数の市民が負傷し、多くの建物が損壊した。

欧州各国の首脳は相次いで非難声明を発表したが、ロシア軍の攻撃は翌日も続いた。ウクライナのゼレンスキー大統領は「これは殺人だ」と強く非難した。

ポーランドのナヴロツキ大統領も「ロシアは他国への侵攻に備えている可能性がある」と警告し、その翌日にはロシアの無人機がポーランド領空に侵入した。

9月10日、ロシアは計415機の無人機と40発を超える巡航・弾道ミサイルを発射し、ウクライナ15の地域に対して継続的な空襲を行った。そのうち19機の無人機がポーランドに侵入し、ポーランド軍とNATOの戦闘機によって撃墜されたが、ポーランド国内では民家の損壊被害も報告されている。

ドイツのピストリウス国防相は「無人機は事前に航路が設定されており、誤操作とみることはできない」と指摘した。1か月前にもロシアの無人機がベラルーシ領内からリトアニア領空に侵入していた。

リトアニアのシャカリエネ国防相は「NATOの東側に位置する私たちは、毎晩危険に直面している」と述べた。

バルト三国のうちエストニアやラトビアでも、ロシアのタンカーや中国の貨物船による海底ケーブルの切断事故が相次ぎ、NATO加盟国は警戒を強めている。

ラトビアは2024年に徴兵制を復活させ、スウェーデン軍も現地で共同防衛演習を実施している。

ロシアと約1400キロの国境を接するフィンランドは、国境沿いの防護壁の第1区間(35キロ)の設置を完了した。米国は9月10日、総額10億7千万ドル(約1580億円)規模の先進空対空ミサイルと関連装備をフィンランドに販売すると発表した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「パトリオット防空システムではポーランドをシャヘド無人機から守れないため、われわれが支援を提供しているのだ」と説明した。

一方、ロシアは9月12日からベラルーシとともに合同軍事演習「ザーパド2025」を開始した。

フランス24( フランスの国際ニュース専門チャンネル)によると、この演習にはNATOも強い関心を示している。前回の演習後、ロシアは即座にウクライナへ軍を派遣した。同日NATOは「イースタン・センチネル」作戦を開始した。

NATO最高司令官のグリンケビッチ将軍は「『イースタン・センチネル』システムは柔軟かつ機動的で、必要な時間と場所において的確な抑止力と防衛を提供できる」と説明した。

英国はウクライナへの冬季支援として約1億9300万ドル(約285億円)の追加支援を約束し、同時にロシアへの100項目に及ぶ新たな制裁措置を発表した。EUはロシアの個人に課している制裁をさらに6か月延長することを決めた。

クレムリンは9月12日、ロシアは和平交渉に前向きであるとしながらも、交渉が「休止状態」にあるのは「ヨーロッパ側の責任だ」と主張した。

ロシアのペスコフ報道官は「欧州諸国がこのプロセスを妨害しているのは事実だ」と述べた。

ヨーロッパ各国が備えを強める中、米国はロシアの経済基盤を断つことを目指している。

ベッセント米財務長官は「もし米欧が協力して、中国やインドといったロシア産石油の購入国に追加制裁や二次関税を課せば、ロシア経済は完全に崩壊し、プーチン大統領も交渉の場に着かざるを得なくなるだろう」と述べた。

トランプ大統領は9月9日、アメリカがインドとの関税交渉を継続すると発表し、モディ首相も積極的に応じる姿勢を示した。

9月11日には、トランプ大統領の仲介によりベラルーシが52人の外国人政治犯を釈放し、米国もベラルーシ航空への一部制裁を解除した。外交筋はトランプ大統領の柔軟な外交手腕を評価し、今回の取り組みはロシアへの牽制にあたると分析している。

「ロシアに対して第二段階の制裁を実施する準備は整っているか」と記者が質問したこと対し、トランプ大統領は「はい、同意する」と回答した。

関連特集: 国際