9月11日、中国の俳優・于朦朧(アラン・ユー)が北京の集合住宅の一室から転落死した。警察は「事件性なし」と結論づけたが、友人宅での酒席後に不自然な状況で亡くなったことから、疑念は消えない。
中国芸能界では、権力者に逆らえない性的接待、いわゆる「潜規則」が存在すると長年ささやかれてきた。今回の死も、その圧力を拒んだことが原因ではないかとの見方が広がっている。ネット上では「数人の関係者に酒席へと誘い込まれ、泥酔させられたうえで業界の大物から性的被害を受けそうになり、必死に抵抗したため殺害された」との噂まで流れている。関与したのは政治高官の子息や特権層との見方もあり、単なる芸能ニュースにとどまらない政界スキャンダルへと発展する可能性が指摘されている。

于朦朧と共演したことのある中国俳優や香港俳優らがSNSで「当夜の食事会に参加していた関係者に真相を語るよう」呼びかけたが、投稿は次々に削除され、アカウントまで封鎖された。当局によるこうした徹底した情報封鎖をうけ、「本当にただの事故なら、当局がここまで神経質に情報を消す理由はない。火のないところに煙は立たない」との声が広がり、疑いが一層深まっている。
沈黙を破ったのは台湾俳優・黄新皓(ホアン・シンハオ、33歳)氏だった。彼は過去に中国で業界幹部から酒席に呼ばれ、泥酔させられた上、ホテルへ連れ込まれそうになったと告白。必死に抵抗して逃げ出し、「顔に熱湯をかけるぞ」と脅されながらも命からがら逃げ延びたという。この証言は、于朦朧が直面した状況への疑念をさらに強めた。

台湾の著名評論家・胡采蘋氏は「于朦朧事件に関するさまざまな噂は真偽が定かではないが、中国当局の対応、ネット上での削除、そして海外で広がり続ける情報の動きを見れば、この出来事が単なる偶然の事故ではないことは明らかだ」と指摘した。さらに「噂が絶えないのは、必ず訳がある。この言葉は中国の権力闘争や有名人スキャンダルで繰り返し証明されてきた」と強調した。
于朦朧の師匠で台湾の著名マネージャー・孫德栄氏も「事件は芸能界と政治の上層部が絡んでいる」と指摘し、食事会の参加者が一切公表されないことに強い不信感を表した。「彼を傷つけた権力はあまりにも強大で、警察さえも従わざるを得ない」と訴えた。
于朦朧の死から一週間以上が経っても、事件に関する情報は削除され続けている。沈黙する芸能界、かき消される声、動かぬ当局。真相はいまも闇の中に沈んでいる。

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