中国各地で食品安全をめぐる事件が相次いでいる。9月16日、貴州省遵義市習水県(じゅんぎ-し しゅうすい-けん)で児童百人以上が美加楽(メイカラ)菓子チェーン店のサンドイッチを食べて次々に倒れ、肝臓や腎臓に深刻な損傷を負い、結石や腎積水、吐血のほか透析を必要とする重症例も出た。
親たちは役所に救済を求めたが黙殺され、やむなくSNSで世論に訴えた動画も削除された。事件から5日後に国営新華社通信が「食中毒の疑い」と初めて報じたものの被害の深刻さには触れず、現場の惨状とかけ離れた官製報道に不信が高まっている。

同じ頃、上海の小中学校の給食からは「臭いエビ」が見つかり、大規模な食品安全問題として波紋を広げた。供給元の「上海緑捷」は市内16区で500校以上に給食を独占供給し、日々50万食以上を扱う巨大企業である。
だがこの会社は十数年前から、腐敗した食材の使用や衛生管理のずさんさ、不透明な入札手続きなどを繰り返し告発されてきたにもかかわらず、処分を免れて存続してきた。地元メディアは沈黙し、当局も説明を拒むなか、人々の不信感だけが膨らんでいる。

しかし、こうした危険食品が中国共産党(中共)幹部の食卓に上ることは決してない。彼らには「特別供給(特供)」と呼ばれる専用の供給ルートがある。北京郊外や各地の特別農場・牧場で生産された食材は、国際基準を上回る検査を経て配送される。幹部子弟の幼稚園や学校も特別供給で守られ、門前には武装警察が立つ。
庶民の子供にはカビたまんじゅうや下水油(排水溝や残飯から回収した廃油を精製した油)のような危険食品が回される一方で権力者の子供は「安全な給食」を保証されている。

毒入りミルク、下水油、混載油(化学薬品と兼用タンクで運ばれた危険な油)など、20年以上続く中国の食品スキャンダルは、単なる監督不行き届きではなく、社会全体の道徳の低下や特権構造に根ざしている。
専門家は「権力者がリスクを共有しない以上、改革の動機は生まれず、庶民だけが犠牲になる」と指摘する。

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