欧州連合 ドローン防衛とロシア凍結資産の活用で一致を模索

2025/10/01 更新: 2025/10/01

10月1日、欧州連合(EU)の首脳らがデンマークの首都コペンハーゲンで会議を開催した。会議は、東欧地域における安全保障体制の強化を主軸とし、主に二つの重要な議題が取り上げられた。

第一の議題は、東欧諸国にまたがる「ドローンの壁(Drone Wall)」の構築である。無人機に対する防御の空白を埋めるべく、センサーと迎撃兵器によって構成される防空ネットワークの創設が目指されている。

第二の議題は、EU域内に凍結されているロシア資産を活用し、ウクライナに対して総額1400億ユーロ規模の利子を伴わない「賠償ローン」を提供する構想である。この賠償ローンにより、ウクライナはヨーロッパ製兵器を購入し、2030年までにヨーロッパの防衛体制を強化しつつ、防衛産業基盤を構築するのを期待している。

防衛強化が喫緊の課題に

近年、ヨーロッパ東側の空域では複数の事件が発生しており、防衛体制強化の必要性が高まっている。先週、デンマークでは正体不明の無人機による領空侵犯が発生し、6つの空港を一時閉鎖した。これに先立ち、ポーランド上空では約20機のドローンが確認され、エストニアも戦闘機の侵入を報告している。

これらの事案を受けて、多くのヨーロッパの首脳は「ロシアによる挑発行為」との見方を示し、ヨーロッパ防衛の強化とウクライナ支援の拡大を求めている。アメリカのトランプ大統領も、これら二点においてEUがより多くの責任を負うべきだと要求している。

一方で、クレムリン(ロシア大統領府)は、これらの事件への関与を全面的に否定している。

フランス、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、イギリス、フィンランド、そしてウクライナはすでに部隊と対ドローンシステムの配備を約束しており、デンマークの安全確保に協力している。

「ドローンの壁」構想 ヨーロパ全体で推進へ

先月、EU欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ポーランド領空が侵犯された事件を受け、「ドローンの壁」構想を打ち出した。これは、侵入してくる無人機を探知・追跡・破壊するためのセンサーおよび迎撃装備によるネットワークを構築するというものである。

NATOのマーク・ルッテ事務総長は、9月30日にこの構想を「時宜を得た、必要不可欠な取り組み」と評価し、「数千ドルの無人機を撃墜するために、何百万ユーロもするミサイルを使うわけにはいかない」と述べた。

ただし、EU委員会は現時点で、費用や技術面の詳細をまだ公表していない。

また、このようなプロジェクトへの資金調達方法も議論の対象となっている。一部の加盟国は共同債の発行を支持しているが、ドイツを含む他の国々は、EUの武器調達向けファイナンスツール「SAFE」(1500億ユーロ規模)を活用すべきとの立場を取っている。

凍結ロシア資産でウクライナに「賠償ローン」提供へ

EUの政策決定者らは現在、凍結されたロシア資産の元本を活用し、ウクライナに最大1400億ユーロのゼロ金利「賠償ローン」を提供する新たな戦略を推進している。これは、ウクライナがモスクワとの戦争を終結させ、賠償金を支払った後に返済義務が生じる形式である。

これまでEUは、凍結資産から生じる利子のみを活用する方針を採ってきたが、元本にまで踏み込むのは大きな方針転換である。

フォン・デア・ライエン委員長は、「より構造的な軍事支援の仕組みが必要であり、そのために凍結ロシア資産に基づく『賠償ローン』構想を提案している」と語った。

ライエン氏はまた、「このローンの一部をヨーロッパ内で使用し、ヨーロッパ製兵器を調達することにより、我々自身の防衛産業も強化する」と強調した。

ドイツのメルツ首相も、ローン資金はウクライナのインフラ復興よりも、ヨーロッパ製兵器の調達を優先すべきだとの立場を示している。

法的課題 全会一致から特定多数決へ?

ロシアの凍結資産を動かすような大規模な措置には、通常すべてのEU加盟国の同意が必要である。このため、現在の計画には大きな政治的障害が存在している。ロシア寄りの姿勢を見せるハンガリーやスロバキアは賛同しない見通しである。また凍結資産の多くが、ベルギー首都のブリュッセルに本拠を置く銀行口座にあることから、ベルギーの反対も想定される。

今回の非公式会議は、アントニオ・コスタEU理事会議長が主導している。

関係者によれば、コスタ氏は協議の枠組みを修正し、「特定多数決」によって関連決定を進める案を提示する可能性がある。

このアプローチは、ドイツの法学者アルミン・フォン・ボクダンディ氏の見解でもある。

ボクダンディ氏は、「条文上、特定多数決がどの条件に適用されるか明示されていないが、そのような解釈は可能だ」と述べた。

ボクダンディ氏によれば、EU条約は、ある加盟国が「EUの基本的な連帯に公然と反する」場合、例外的に特定多数決による決定を認めているという。

ロシア制裁とウクライナのEU加盟促進へ

これまでにEUおよび加盟国によるウクライナへの支援総額は、1735億ユーロを超えている。EUは現在、対ロシア制裁を進めており、外部報道によれば、新たな制裁案の草案では、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、キルギス、タジキスタンなど第三国の銀行やエネルギー企業にも制裁が拡大される予定である。

この制裁案では、2027年初頭までにロシアからの液化天然ガス(LNG)輸入を段階的に停止する方針も盛り込まれている。

さらに、ウクライナのEU加盟プロセスを加速させるため、コスタ議長は交渉枠組みの修正を提案し、ハンガリーの拒否権を回避するために「特定多数決」によって加盟交渉を開始する可能性もあるとみている。

陳霆
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