フランス ロシア「影のタンカー」を拿捕 中国人船長を起訴へ 対ロ制裁強化

2025/10/03 更新: 2025/10/03

フランスは、ロシアの「影の船団」に属すると非難されるタンカーを拿捕した。この船はロシア産原油を積載し、インドへ向かっていた。マクロン大統領は今回の措置について「ヨーロッパによる対ロシア圧力戦略における重要な転換を示す」と強調した。

フランス側によれば、乗船の際には船員から「不適切で極めて攻撃的な行為」が確認され、同船の中国人船長は来年初頭にフランスで裁判にかけられる見込みである。

マクロン大統領は、今回の行動がロシアの戦争資金を断つためのヨーロッパの新たな戦略の一環であり、フランスは「妨害政策」へ転換していると説明した。自国の水域内で「この種の疑わしい船舶」を発見した場合、適切な措置を講じる考えであると述べた。

「我々はロシアへの圧力をさらに強め、交渉の場に戻したい」と大統領は語った。

彼によれば、このタンカーはロシアの「影の船団」に属していると考えられる。同船団は老朽船が多く、所有権が不透明で、西側制裁を回避するために応答装置(トランスポンダー)を切りながらロシア産原油を輸送している。その規模は800~1千隻に上ると推定している。

マクロン大統領は、ロシアの戦争資金の30~40%が「影の船団」による収入から賄われており、その額は300億ユーロ(約5.2兆円)を超えると見積もった。

「この船団に対する圧力強化は極めて重要である。なぜなら、それがロシアの戦争資金調達能力を直接弱体化させるからである」と述べ、数日から数週間の拿捕行為であっても「そのビジネスモデルを破壊することになる」と付け加えた。

ロシア側の反発

フランスの措置は直ちにロシアの反発を招いた。プーチン大統領はこれを「海賊行為」と非難し、「このような行動は確実に対立のリスクを深刻に高める」と警告した。

プーチンは「フランスは公海上で、理由なくこのタンカーを拿捕した」と主張し、「船内には軍需品も無人機も存在しないし、存在し得なかった」と付け加えた。その上で、フランスの行為は国内問題から国民の目を逸らすための政治的手段であると批判した。

「これは海賊行為である。海賊をどう扱うか? 破壊するしかない。これが明日、世界の海で戦争が始まるという意味ではないが、対立の危険は確実に増している」と発言した。

これに対しマクロン大統領は、乗船時にフランス海軍が船員から「不適切で極めて攻撃的な行為」に遭遇したと述べ、司法調査の実施には正当性があると強調した。

違反の経緯と裁判の見通し

フランス国防省によると、先週9月27日にフランス海軍特殊部隊が西岸沖でこの船を捉え、強制的に乗船した。調査の結果、当時この船は国旗を掲げておらず、船員が提出した船籍情報にも矛盾があったことが判明している。

このタンカーは過去に何度も名称が変更され、現在は「Pushpa」または「Boracay」を名乗っている。以前はベナン船籍を掲げ、ロシア産原油輸出に関与した疑いからEUとイギリスの制裁対象となっていた。

マクロン大統領によれば、同一の船は今年初めにも旗についての問題でエストニアに拿捕された。

エストニア公共放送は今年4月、この船が「Kiwala」の名でロシアのウスチ・ルガ港に向かう途中、タリン湾外で拿捕されたと報じた。当時のミハル首相はSNSで「我が国の海軍は旗国を持たない制裁対象の船を拿捕した」と投稿している。

現在、この事件はフランス西部ブレストの検察庁が捜査している。検察官ステファン・ケレンベルガー氏によれば、船長は中国国籍で、協力拒否などの容疑で起訴された。公判前の聴聞は来年2月23日に予定している。船長には最長で1年の禁錮刑と15万ユーロ(約2600万円)の罰金を科す可能性があるという。なお、一等航海士も拘束したが、後に釈放されている。

デンマークでの無人機事件との関連

マクロン大統領は、同船が先週デンマーク沖を航行していた際、デンマーク領空で発生した無人機による活動と関係している可能性があると述べた。

その時、この船はバルト海から北海へ向かっていたが、デンマークの空港は無人機活動のため閉鎖に追い込まれている。海事専門サイト「The Maritime Executive」によれば、全長244メートルのこの船は無人機飛行事件に関与した疑いがあり、発射台あるいは「おとり」として利用された可能性があるという。

積荷と航路

海運データに詳しい複数の商社関係者がロイターに語ったところによれば、この船は9月20日、ロシアのプリモルスク港でロスネフチ社が供給したウラル原油10万トンを積み込み、インドのヴァディナール港へ向かっていた。ヴァディナールにはインドのナイヤラ・エナジー社が運営する製油所が所在している。

陳霆
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