中国ではいま、市場で捨てられた野菜を拾って生活をつなぐ人々が急増している。各地からSNSに投稿された動画には、閉店後の市場で、売れ残りや廃棄された野菜を拾い集める人々の姿が相次いで映し出されている。
野菜を求めて来た人々の中には、大学を卒業したばかりの無職の若者や、長く仕事を失っている中年層、さらに子育て中の母親なども含まれている。
(閉店後の市場で、売れ残った野菜を拾い集める人々、2025年9月、中国・安徽省)
背景には、長引く不況と深刻な就職難がある。家賃やローン、物価高が重くのしかかり、どんなに切り詰めても追いつかない。「働いても食べられない」そんな現実に、いま多くの人が押しつぶされている。

ところが一部の中国メディアは、この現象を「環境に優しい」「新しい生活スタイル」「シンプルな幸せ」と持ち上げ、「野菜市場で潮干狩り」「これは節約ではなく自由を拾う行為」といった記事を掲載した。

こうした報道に対し、世論は一斉に反発。「苦しみを喜びにすり替えるな」「本当に幸せなら、自分たちの子供にも同じ生活をさせてみればいい」と批判が殺到した。騒動の広がりを警戒した当局は報道を打ち切り、関連投稿も次々と削除した。

人々が拾っているのは、廃棄された野菜だけではない。希望を失った国の片隅で、彼らは生きる権利そのものを拾い集めている。
(閉店後の市場で、売れ残った野菜を拾い集める人々、2025年9月、中国・江蘇省)
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