中国では、若者の就職難がかつてないほど深刻化している。
今年の大学卒業者は約1222万人に達するとみられるが、昨年の内部資料によれば、上海の有力大学で就職できたのはわずか15%にとどまったという。政府が公表する数字は実態とかけ離れているとの指摘が相次ぎ、正確な失業率は誰にもつかめない。海外メディアも一斉に報じており、現地の声を総合しても、状況の改善は見られない。
そうした焦燥感につけ込むように、「闇ビジネス」と呼ばれる詐欺的な就職商法が横行している。
SNS上には「履歴書添削599元(約1万3千円)」「面接練習6000元(約13万円)」「大手企業推薦2万元(約42万円)」などの広告が溢れ、著名企業の人事担当を名乗る「導師」が次々と登場し、内定保証をほのめかしている。
しかし、その多数はフェイクだ。
短編動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するバイトダンスの人事部長を名乗る人物に3000元(約6万3千円)を支払い、面接指導を受けたという求職者は、「返ってきたのは『自分の強みをアピールしよう』といった教科書的な助言ばかりだった」と語る。調査の結果、その人物は同社に短期間在籍しただけの別職種の元社員で、人事経験はなかったという。

中国メディアの調査によれば、こうした「導師」の多くがアリババ、テンセント、バイトダンスなど大手企業の「元人事」や「面接官」を名乗り、偽造した社員証や社内写真の盗用によって信憑性を装っているという。
提供される「ワンツーマンの指導」の実態も、AIが自動生成した定型文の読み上げにすぎず、「履歴書添削」と称する内容も無料テンプレートの使い回しが目立つ。中には、40分の講義のうち30分がネット上で公開されている就職対策資料の棒読みだった例も確認された。
さらに、「大手企業と人事協力がある」「内部推薦で必ず採用される」と称して、実習枠や内定保証を販売する機関も現れ、その価格は2万元(約42万円)以上にのぼるという。
こうした「就職支援」名目の詐欺が相次ぐ現状について、専門家は警鐘を鳴らす。「本物の人事担当者が金銭を受け取って外部で指導を行うことはあり得ない。『必ず受かる』という言葉に騙されてはいけない」。
職を求めて歩き続ける若者たちに、夢を食い物にする影が忍び寄る。
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