かつては「中共の旗を台湾に立てよう」と叫び、愛国の戦士を名乗った女性がいた。名は小微(シャオウェイ)。だがその「忠誠」は、台湾からも祖国からも歓迎されなかった。
小微は同じく中国大陸出身の女性・亜亜(ヤーヤー)と恩綺(エンチー)と共に、動画配信アプリ「抖音(ドウイン、中国版ティックトック)」で中共支持をあおり、「武力統一」と発言して批判を浴びた。三人は台湾世論の反発を受け、台湾当局から在留許可を取り消され、中国大陸へ強制送還された。
帰国後、小微は故郷の貴州(きしゅう)省の山あいで暮らしながら、ネット上で動画を発信し続けている。最近では「病気の夫(台湾人)と3人の子を看病したい」と涙ながらに訴え、台湾への再入国を懇願していた。しかし、生活への不満を投稿した際には、地元警察から「削除しろ」と脅され、恐怖のあまり夜中に震えたこともあったという。
ところが、10月のライブ配信では一転して強気な姿勢を見せ、台湾当局を「不公平だ」と批判し、「台湾はもっと公正で包容力を持つべきだ」と言い放った。続けて「現実をよく見るべきだ」と台湾側を威圧するような口調で語ったその瞬間、配信は突然途切れ、封鎖されたのだった。
忠誠を叫んだ声を消したのは、ほかならぬ祖国の検閲だった。

ネット上では「忠誠にも検閲があるとは」「祖国の愛をたっぷり味わえ」と皮肉の嵐。自ら掲げた旗に殴られるような結末に、小微の「愛国物語」は静かに幕を下ろした。
なぜ彼女の「愛国」と「台湾批判」といった、一見政治的に正しいはずの言論がダメだったのか。
理由は単純で、中国では「何を言うか」よりも「誰が言うか」が問題になるからである。愛国も統一も、共産党の独占テーマであり、庶民が勝手に語れば筋書きが狂う。
つまり、彼女は正しいことを言ったのではなく、許されない口で言ってしまったのだ。その瞬間、愛国は忠誠ではなく違反に変わる。それが、彼女が味わった忠誠の代償だった。
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