中国 ビビりすぎた統制国家の現実

「ドラえもん」も逮捕される中国のハロウィン 体制風刺を恐れる中共当局

2025/11/05 更新: 2025/11/05

近年のハロウィンでは、体制を風刺したとみなされた仮装者の逮捕が相次いだが、それでも今年若者たちは再び街へと繰り出した。

若者が仮装を通じて現体制を風刺することを警戒する当局は、今年も神経を尖らせていた様子だった。監視の範囲は街頭だけでなく、教育現場にも及んだ。

ハロウィンを前に、複数の大学が学生に「参加禁止」を通達し、ハロウィン後には「参加者は申し出よ」と自首を迫った。

 

ハロウィン当夜、警戒にあたる警察官、2025年10月31日夜、上海市中心部。(映像よりスクリーンショット)

 

ハロウィンの聖地として知られる上海の繁華街には警察と警備員が一斉に配置され、仮装した市民は相次ぎ検問を受け、マスクを外すよう命じられた。地下鉄では化粧や衣装まで確認され、通行人への職務質問が相次いだ。

 

街中で警察にハロウィンのメイクを落とすよう命じられ、いやいや化粧を落とす若い女性、2025年10月31日、中国。(映像よりスクリーンショット)

 

上海の街中では、『ドラえもん』に扮した女性がその場で連行され、さらに『西遊記』に登場する半人半豚のキャラクター・豬八戒(ちょはっかい)の姿をしたフードデリバリー配達員も取り締まりを受けた。身分証を登録されたうえ、その場でコスプレ衣装を脱ぐよう命じられたという。

 

街角で警察に止められ、身分証登記などの取り締まりを受けた「豬八戒」。(映像よりスクリーンショット)

 

上海の隣にある浙江省杭州市でも、バットマン姿の市民や上半身裸で鎖を巻いた若者が連行される場面があった。東北の黒竜江省ハルビン市では、中共のゼロコロナ政策を象徴する白い防護服姿の医療関係者(通称「大白」)の仮装をした男性が公安に制止され、南京でも仮装した人が拘束される映像が拡散している。

 

公安の取り締まりを受ける上半身裸で鎖を巻いた若者と「大白」、2025年10月31日、中国。(映像よりスクリーンショット)

 

武漢では10月30日、当局が「道路補修工事」を名目に、昨年ハロウィンで多くのコスプレイヤーが集まり体制を風刺した場所を封鎖した。ハロウィンを楽しもうとしただけの市民が過敏に反応する当局によって「社会不安要素」として扱われた格好だ。

 

「ドラえもん」や「豬八戒」の逮捕、なぜ?

ドラえもんの「罪」については、「日本のキャラクターを真似しただけで中国を侮辱したと見なされたのではないか」との指摘がある一方で、「上海では今もドラえもん展が開催されているのだから、それは違う」との反論もある。

しかし、ネット上の「名探偵」たちが導き出した真相はさらにシュールで、当局はドラえもんの仮装を、アカウントのアイコンにドラえもんを使用しているカナダ在住の中国人ユーチューバーで中共批評家の「多倫多方臉(トロントの四角い顔)」への「支持表明」と受け取った可能性があると指摘されている。

 

「多倫多方臉」のYouTubeチャンネルページ、ドラえもんのアイコンが特徴的。(YouTubeページよりスクリーンショット)

 

そして、豬八戒の「罪」は何といっても習近平のあだ名が「猪頭」(豚の頭を意味し、侮辱的な呼称)として知られていることからだと、容易に想像がつく。

ドラえもんも豬八戒も「反逆者」にされた現実に、多くのネットユーザーが言葉を失った。あるユーザーの言葉が、多くの共感を呼んだ。「中国の自由とは、政府が許した範囲の自由。いまや、仮装どころか、笑うことさえ政治の顔色を見なければならない」

中国では近年のハロウィン、上海や武漢などで多くの若者が体制批判を込めた仮装を行い、国際的な注目を集めた。

だが今年は、同じ街が警察の制服に覆われ、仮装する若者の姿はまばらだった。「もう昔のようには戻れない」SNSにはそんな落胆の声が相次ぎ、あの夜の高揚感は、当局の過剰な警戒心理によりすっかり冷え込んでしまった。

 

防疫要員の「大白」に扮する市民(左)や、「白紙革命」を連想させる体中に「白い紙」を張り付けた市民(右)。(SNSより、2023年ハロウィン、上海)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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