現在、ネットワーク機器大手のTP-Linkが米連邦取引委員会(FTC)をはじめ複数の政府機関から調査を受けている。調査は、同社が昨年の組織再編後に中国共産党との関係を意図的に希薄化して見せ、企業イメージを米国企業として誤認させた可能性があるとの指摘を受けたもの。調査は連邦レベルのみならず複数の州にも広がり、販売禁止を求める動きも強まっている。
事情に詳しい関係者によれば、FTCはTP-Linkが米国消費者に対し中共との結びつきを十分に開示していなかった疑いを調べている。同社は米国の家庭用・中小企業向けルーター市場で約65%のシェアを持ち、Amazonでも上位の販売実績を誇る。
TP-Linkは一部の連邦政府機関や国防総省にも機器を供給している。米国事業を率いる共同創業者ジェフリー・チャオ氏は「会社も個人も中共との関係はない」と強調するが、政府機関や議会からは引き続き安全保障上の懸念が示されている。
米当局はすでに、中共の支援を受けたとされるハッカー集団「ボルト・タイフーン」や「ソルト・タイフーン」が、侵害したTP-Link製ルーターを踏み台にサイバー攻撃を行っていたことを確認。標的は水資源、交通、通信など、米国の重要インフラに及んでいるとされる。
マイクロソフトも昨年、2021年以降に中共系ハッカーがTP-Link製ルーターを利用し、クラウド顧客の認証情報を窃取した可能性を指摘した。
日本でも懸念が広がっており、高市早苗首相は過去に自身のユーチューブチャンネルでTP-Linkを含む中国製ルーターのリスクに言及。「TP-Link社製のルーターに埋め込まれた悪意あるファームウェアについて報告をしました。実際に攻撃が行われたんです」と述べた。
続けて、「マイクロソフトは中国の国家支援型ハッカー集団ストーム0940が主にTP-Link社製のルーターなど約1万6千台以上のIoTデバイスを侵害して、ボットネットを構築し、マイクロソフトのこのクラウドサービスへのこの大規模なサイバー攻撃を行ったということでございました」と語った。
米議会では規制論が強まる。5月には上院情報委員会のトム・コットン委員長(共和党)ら10人超の共和党議員が、TP-Link製品の国内販売禁止を提案。下院の対中共特別委員会のラジャ・クリシュナモルティ筆頭委員(民主党)も公聴会で同社製ルーターを掲げ、「私は使用していない」と述べ、利用を控えるよう訴えた。
米商務省は数か月の審査を経て販売禁止を提案しており、司法省、国土安全保障省、国防総省など複数機関がこれを支持している。調査の行方は、米国における中国製ネットワーク機器の扱いに大きな影響を及ぼす可能性がある。
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