変装脱出劇でノーベル賞受賞 軍検問10か所突破 漁船でカリブ海渡り マチャド氏オスロ到着

2025/12/12 更新: 2025/12/12

ベネズエラ野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏が変装で軍検問10か所突破、漁船でカリブ海を渡りノルウェーへ。娘代理受賞後自ら到着、トランプ政権支援を認めノーベル平和賞2025を「国民と米大統領に捧ぐ」。マドゥロ独裁からの劇的脱出劇を追う。

2025年のノーベル平和賞授賞式は12月10日に行われた。しかし、受賞者のマリア・コリナ・マチャド氏は当初、式典に間に合わなかった。だが、このベネズエラの反体制派指導者は、命懸けの脱出劇の末、10日深夜にノルウェーのオスロに到着し、独裁体制に立ち向かった成果として得た栄誉を自ら受け取ったのである。

彼女の公の場への登場は、今年1月以来初めてだった。マチャド氏はマドゥロ政権による逮捕を避けるため、約1年間にわたり国内で身を潜めていた。

変装突破:10か所の軍検問を回避した10時間

今回のオスロ行きは、まさに劇的な脱出劇であった。マチャド氏は12月8日の午後、ウィッグをかぶって変装し、ベネズエラの首都カラカス郊外を出発して沿岸の漁村へ向かった。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によると、今回の行動に詳しい関係者によれば、10時間にわたる緊迫した旅の間に、マチャド氏と2人の同行者は10か所の軍検問所をうまく回避し、最終的に真夜中前に海岸へ到達したという。

その後、彼女らは木製の一般的な漁船に乗り込み、強風と荒波が打ち付けるカリブ海を越える危険な航海を経て、キュラソー島に到達した。

キュラソーでは、トランプ政権の支援による民間契約業者と合流した。事情に詳しい別の関係者によれば、トランプ政権はこの脱出劇を事前に把握していたという。その後、マチャド氏はプライベートジェットに乗り換え、オスロへ向かった。

2025年12月11日、ベネズエラ野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏は、夜通しのフライトを経てノルウェー・オスロのガーデモエン空港に到着した。数時間前、マチャド氏の娘が彼女に代わってノーベル平和賞を受け取っていた。(Amanda Pedersen Giske/AFP via Getty Images)

キュラソーはカリブ海南部に位置する島で、オランダ王国を構成する自治国家の一つであり、高い自治権を持っている。

トランプ政権の支援と米軍F-18護衛か

マチャド氏の脱出劇は、ちょうどトランプ政権がマドゥロ政権への圧力を強化していた時期と重なった。今回の行動に関与した関係者が『ウォール・ストリート・ジャーナル』に語ったところによると、マチャド氏を支援した組織は出航前に米軍へ事前連絡を取り、周辺海域の米軍に「マチャド氏が乗る漁船を麻薬密輸船と誤認して攻撃しないように」と警告していたという。

マチャド氏がカリブ海を横断していた際、米海軍のF-18戦闘機2機がベネズエラ湾に進入し、彼女の航路近くの空域を約40分にわたって旋回した。

トランプ政権は現在、カリブ海域で軍事力を集結させ、麻薬密輸・人身売買の取り締まりを続けている。米軍は過去3か月間で同地域において麻薬密輸が疑われる船舶を20回以上攻撃し、撃沈しており、さらにマドゥロ政権への圧力を強めるため、「陸上作戦を含む追加の軍事行動」を警告している。

10日、トランプ大統領は、米軍がベネズエラ沖で制裁対象となっていたタンカーの1隻を拿捕したと発表した。

娘の代理受賞から本人の劇的登場 賞を「国民とトランプ大統領に捧ぐ」

10日の授賞式では、マチャド氏の娘アナ・コリナ・ソサ氏が代わりに賞を受け取った。この授賞式には、アルゼンチンのミレイ大統領など複数の中南米首脳が出席し、支持を示した。

2025年12月10日、ノルウェー・オスロにて。ベネズエラのノーベル平和賞受賞者マリア・コリナ・マチャド氏の娘、アナ・コリナ・ソサ(Ana Corina Sosa)氏が母親に代わって賞を受け取った。隣には欠席したマチャド氏の写真が掲げられていた。(Ole Berg-Rusten/AFP via Getty Images)

マチャド氏は受賞スピーチの中で、このノーベル平和賞をベネズエラ国民とアメリカのトランプ大統領に捧げると述べ、「ベネズエラの民主化を支える彼の断固たる支援に感謝する」と語った。

記者会見で今回のオスロ行きがアメリカ当局の支援によるものかを問われると、マチャド氏は「はい、私たちは確かに米政府の支援を受けました」と明言した。

マチャド氏はノーベル平和賞をベネズエラに持ち帰ると誓い、国内の支持者たちに向けて力強く誓った。  「私は必ず戻る」

李言
関連特集: 北米・中南米