中国共産党(中共)が約20年にわたり続けてきた経済制裁や報復外交が、国際社会の警戒を強めている。日本への海産物禁輸やリトアニアの通関排除など、気に入らない国を経済的に締め付ける手法は一見効果的に見えるが、専門家は「中国の信頼を損ない、各国の連携した反制を招きつつある」と警告する。
二十年にわたる制裁の歴史 中共の「報復外交」が明らかに
英誌「エコノミスト」は12月8日、中共の外交パターンは「常に一定の圧力を保ちながら、その対象を次々と変えていく特徴がある」と指摘した。
今回、新たな標的となったのは日本の高市早苗首相だ。高市氏が先月、「中共が台湾を攻撃すれば、日本の存亡に関わる事態となる可能性がある」と述べたことを受け、中共は日本産水産物の輸入禁止、訪日自粛の呼びかけ、コンサートや映画上映の中止、さらには軍事的威圧など、複数の報復措置に踏み切った。
報道によると、中共は「気に入らない相手を制裁で報復する」外交手法を20年以上続けてきた。初期の標的は、ダライ・ラマと会談した各国指導者の国に貿易制裁などの圧力をかけた。その後、2012年の南シナ海を巡るフィリピンとの摩擦や、2016年の韓国による米国製THAADの配備など、より幅広い事案で同様の制裁を行ってきた。
オーストラリアの研究者によるデータベースによると、2008年以降の世界約100件の「貿易の武器化」事例のうち、およそ4割が中共によるものだという。中共は制裁を公式に「懲罰」とは認めないが、発動の時期や対象の選び方から、政治的意図が透けて見える。
2021年、リトアニアが台湾代表処の名称に「台湾」を使用することを認めた際、同国の輸出企業は、中共の税関システムで自国名が突然見当たらなくなっているのを発見した。2018年には、カナダがアメリカの要請を受けてファーウェイの孟晩舟を拘束した後、中共はカナダ産菜種の輸入を止めた。
「市場支配力」を利用した政治的干渉
時事評論家・唐靖遠氏は、中共の外交手法の本質について、経済をてこにして政治的要求を押し付けるロングアームだと分析する。中国は巨大な国内市場と経済規模を背景に、特定分野の消費や輸入を事実上左右できる支配力を持つようになった。
唐氏は「中共はその経済力を武器に政治的目的を押し通し、多くの国に自らの要求に沿う対応を迫っている」と語った。
また、中共は暴力的思考を基盤にしており、一度効果があると分かれば、制裁を常態化し対象を広げる傾向にあると指摘した。
台湾国防安全研究院の龔祥生研究員も、制裁が特定産業に打撃を与えることはあっても、国家政策そのものを変える効果は乏しいと見る。
「中共の目的は不満の表明とレッドラインを強調することだ」と述べた。
中共の隠れた経済制裁メカニズム
「エコノミスト」は、中共の制裁が実際に政策変更をもたらす例は多くないとしつつ、「国際社会が萎縮し、台湾や民主化など敏感な問題に触れることを回避する効果はある」と分析する。
制裁コストが中国側にとって低く、輸入先の切り替えも容易なため、対象国だけが大きな損害を被る構造になっている。
専門家の警告 信頼失墜と外交的逆効果
唐靖遠氏は、中共が制裁を乱発すれば二つの結果を招くと指摘する。
一つは、多くの国がその強圧的な手法に反発し、中国への依存を徐々に減らしていくこと。もう一つは、中国のイメージと信用が大きく損なわれ、「国際社会でならず者国家と見られるようになる」ことだ。
「短期的には相手に自己検閲を促すかもしれないが、長期的には政権の信頼が失われ、国家の将来にとって大きな損失になる」と同氏は述べた。
中国問題専門家の王赫氏は、中共のやり方が中国への国際的な不信感を強めていると指摘する。
「中共がオーストラリア、韓国、日本、フィリピンに報復外交を仕掛けている現状を見れば、同じことが他の国に及ばない保証などない」と述べ、
「これは国際外交の基本原則を踏みにじる行為であり、相手だけでなく中国自身にも不利益をもたらす。まるで外交部を外闘部にしているようなものだ」と批判した。
龔祥生氏は、中共の強硬姿勢は国内の民族感情をまとめ、政権の正当性維持に役立つと指摘する。その一方で、関連産業が被る損失について当局はほとんど気にしていないという。
「エコノミスト」は、制裁を受けた国では対中感情が恒常的に悪化し、外交改善の障害となると指摘した。韓国ではミサイル防衛をめぐる報復後、中国への好感度が急落し、そのまま低迷した。カナダや豪州でも、中共への不信感は根強い。こうした世論は各国政府の対中関係改善の妨げになっている。
同誌は、中共には「多少の反発を招いても強硬姿勢を示す方が得策だ」という計算があると分析する。観光客や投資家が減っても、外国政府に自制を促す効果があるとみているためだ。また、「日本への制裁は、相手を罰するだけでなく、自らのレッドラインを明確にする狙いがある」と結んでいる。
国際社会の対抗策
唐靖遠氏は、中共を「信頼できないパートナー」と認識する国が増えれば、各国が連携して中国依存を脱し、「国際市場から中共を排除する動きが進む」と指摘する。これは中国が改革開放で得た利益を失い、半ば閉ざされた状態に戻りかねないと警告した。
王赫氏は、リトアニアやオーストラリアの例を挙げ、「受けた側が冷静に対応すれば、中共制裁の実効性は低い」と述べる。
龔祥生氏も「各国が譲らず一貫した姿勢を保つ限り、中共は打つ手がなくなる」と語った。
三氏の共通見解は、「中共の経済制裁は短期的な圧力にはなっても、長期的には信頼を損ない、各国の対抗措置を招き、最終的に自身の不利益となる」という点で一致している。
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