中国の病院で、生後5か月の赤ちゃんが手術中に死亡した。
その後に出された当局の説明に対し、遺族と世論から「説明になっていない」との強い反発が広がっている。
事故が起きたのは、中国浙江省寧波市の公立「寧波大学付属婦女児童医院」で、亡くなったのは「小洛熙(シャオ・ルオシー)」と呼ばれる女児。洛熙ちゃんは心臓の手術を受ける予定で、家族には「小さな手術で危険は低い」と説明されていた。しかし手術の途中で突然亡くなった。
家族は理由を知ろうと病院に説明を求めたが、詳しい説明はなく、手術室の映像確認も拒んだ。病院側は「記録は残っていない」と説明したという。家族が声を上げ続けた結果、12月14日になって、当局が調査結果を公表した。
当局は、手術前のリスク判断が不十分だったこと、手術操作に問題があったこと、異常発生時の対応や説明が適切でなかったことを認めた。そして、院長や医師らを「処分した」と発表した。
だが、その通報には決定的に欠けているものがあった。
誰が処分されたのか、その名前が一切書かれていなかったのである。
「院長」「主治医」「責任者」と肩書きだけが並び、実在の人物が見えない。これでは、どの医師が関わり、誰が責任を取ったのか、外部から確認することができない。
さらに当局は、「手術室の監視カメラは保存できない仕様だった」と説明した。録画できるのは麻酔機器専用の映像のみで、医師の手元や手術の様子は確認できないという。命に関わる医療行為の記録が残らない仕組みだったことに、多くの人が強い不安と不信を抱いた。
この問題は中国のSNSで爆発的に拡散し、関連話題は2.9億回以上閲覧された。しかしその後、検索ワードや話題は削除され、疑問の声は事実上封じられた。
赤ちゃんの母親が求めているのは、ただ一つだ。
「なぜ、うちの子は死んだのか」。
だが今のところ、その問いに、名前を出して答える人はいない。
(本件に関する過去記事)

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。