米国と台湾 関係を一段と強化

2026/01/17 更新: 2026/01/17

経済・軍事・外交の各面で接近示す兆候が相次ぐ

【論評】
ドナルド・トランプ米大統領は最近、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対し、中国の習近平が台湾を攻撃するかどうかは「彼次第だ」と述べた。これは事実であるものの、一部メディアでは、トランプ氏が台湾防衛から後退したかのように受け取られた。しかし、そうした見方は事実からかけ離れている。

ドナルド・トランプ米大統領は最近、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対し、中国の習近平国家主席が台湾を攻撃するかどうかは習近平国家主席自身の判断に委ねられるとの認識を示している。そのうえでトランプ大統領は「台湾を攻撃すれば強い不満を抱く」と習近平に伝えたと説明し、また習近平はそのような行動には出ないと考えているとも述べた。

この発言は、中国に対する抑止として機能する含みを持ち、台湾を巡る米国の長年の政策である「戦略的曖昧性」と整合している。

米国が台湾防衛への関与について明確にしない理由は主に二つある。第一に、中国共産党政府に対し、米国が台湾を防衛する可能性があると信じさせることで抑止を図るためである。

第二に、台湾政府に対しては、必ずしも米国が防衛に乗り出すとは限らないと認識させ、台湾自身の自助努力を促す狙いがある。結果として、台湾による米国製兵器の購入を後押しする効果も生んでいる。

台湾の国防当局高官は1月15日、米国からの4件の大型防衛装備調達計画を発表した。これは、2025年11月に発表された400億ドル、12月に発表された110億ドル規模の調達に続くものである。新たな支出には、ロッキード・マーチン製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)や、アルティウス製の徘徊型弾薬ドローンが含まれ、いずれも中国人民解放軍(PLA)の侵攻に対する台湾防衛に有効とされる。

さらに最近では、米国と台湾が経済、軍事、外交の各分野で接近していることを示す指標が三つ確認されている。

第一に、両国は1月15日、貿易協定に合意した。これにより、アリゾナ州での台湾系半導体製造が拡大される。TSMC(台湾積体電路製造)を中心とする台湾企業は、AI対応半導体工場(ファブ)への投資として、総額2500億ドルをアリゾナ州に投じると約束している。

その見返りとして、米国による台湾への関税は20%から15%に引き下げられる。TSMCは米国内投資を理由に関税の適用除外となる。同社はアリゾナ州での事業展開を支援するため、米政府から数十億ドル規模の補助金も受け取っており、同州には最終的に約12か所のファブが設置される見通しだ。

米国の狙いは半導体の自給自足体制の確立であり、これは特にAI分野で中国共産党(中共)との世界的競争に勝つうえで極めて重要とされる。半導体の自立は中共にとっても目標だが、この分野では米国が中国を上回っている。TSMCのファブは、世界のAI対応半導体の大半を生産しており、台湾との連携は米国にとって不可欠である。

第二に、米国と台湾は現在、155ミリ砲弾の共同生産を計画している。これは、台湾がすでに生産能力を持つ軍需品について、共同生産を促進するという米国の方針に沿うもので、台湾経由で中国に技術が流出するリスクを低減する効果があるとみられる。

ウクライナ戦争では、砲弾の十分な供給が戦局において極めて重要であることが示された。最悪の局面では、ウクライナ軍はロシア軍の砲撃に対し、1対20という比率で砲弾の使用を制限せざるを得なかった。ウクライナ、ロシア両軍の死傷者の最大80%が砲撃によるものとされ、将来の台湾防衛でも同様に砲兵力への依存が高まる可能性がある。

第三に、台湾のエバー航空(EVA Air)は2026年7月から、台北―ワシントン間の直行便を開設する計画だ。台湾の航空会社によるワシントン直行便は初めてで、北米南東部への直行便不足を補う狙いがある。

エバー航空は、2025年12月30日に人民解放軍が台湾周辺で実施した「準封鎖」とも呼ばれる軍事演習の影響を受けた企業の一つである。この演習では、約1千便が意図的に混乱させられ、10万人以上の旅行者に影響が及んだ。

こうした段階的に激化する「演習」は、将来的に実際の侵攻の隠れみのとなる恐れがある。これは、台湾市民全体に対する中国共産党による一種の威圧行為であり、民主的に選ばれた台湾政府への不満を高める狙いがあるとみられる。

中共は、台湾が民主主義を放棄し、中国本土との統一を選ぶと考えている可能性があるが、現実には、嫌がらせが強まるほど、台湾市民は中共を拒否し、安全保障上の同盟国、貿易相手、そして同じ民主主義国家として米国をより強く支持する可能性が高い。

時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。
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