中国の軍事演習 宣伝映像を通じ心理戦の様相も

2026/01/21 更新: 2026/01/21

中国人民解放軍(PLA)が2026年の訓練サイクルを開始する中、中国共産党(中共)政府は、実地の軍事演習に加え、新型兵器の投入を既成事実化し、不可避性を印象づけるため、組織的なメディア・ソーシャルメディア発信を行っている。

もっとも、このキャンペーンは台湾や米国を抑止するには至っておらず、むしろ前提や能力、限界をさらすことで中共政府の手の内を明らかにしている可能性がある。

中共国防省の張暁剛報道官は、軍は習近平の指示を研究・実行し、政治的忠誠の強化、改革や技術、人材育成の推進を通じ、機械化・情報化・知能化技術を組み合わせた統合的な軍事近代化を加速させると述べた。

PLAは1月4日、航空、海軍、地上、ロケット、支援部隊を統合した大規模な合同戦闘演習を実施し、2026年の年次訓練を開始した。演習では、迅速な統合作戦調整と多領域作戦を重視し、J-20ステルス戦闘機、055型駆逐艦、DF17極超音速ミサイル、無人プラットフォームの拡充を含む先進装備が投入された。

第79集団軍の部隊を含む地上部隊は、偵察ドローン、爆弾投下ドローン、発煙ドローン、操作者が弾薬に設置されたカメラの映像を見ながら目標まで達するFPV徘徊型弾薬、ロボットシステムを組み合わせた実弾演習を実施し、無人システムを近接戦闘の戦力増幅装置として用いる「知能化戦争」への移行を示した。

これらの技術の多くは2025年9月の大規模な戦勝記念日パレードで披露されていたが、今回の演習は、その多くが実運用として初めて投入された点で画期的だ。先進装備が見せ物から通常の作戦訓練の一部へと位置づけが変わったことを示している。

PLAはまた、洗練された映像制作と連動したソーシャルメディア配信を通じ、年次訓練を心理戦の一形態へと変容させた。

中国中央テレビ(CCTV)や中国国際テレビ(CGTN)、東部戦区司令部の公式チャンネルは、劇的な音楽や高精細ドローン映像、CGを用いた映像を相次いで公開し、PLAの能力を強調している。映像は実際の演習と模擬シナリオを織り交ぜ、不可避性と優越性を印象づけ、共産党系メディアや各種SNSで拡散された。

映像は中国中央テレビで最初に放映され、Xの公式アカウント「@ChinaMilBugle」などで拡散されたほか、微博や抖音などの中国SNS、さらに2024年9月以降はフェイスブック、インスタグラム、ユーチューブといった海外プラットフォームの軍事系アカウントでも配信された。2026年1月の訓練映像はCCTV、環球時報、新華社を通じ同時に公開され、通常の軍事報道ではなく、連携した情報キャンペーンであることを示した。

また東部戦区司令部は12月、「正義の使命2025」演習の期間中、ドローン視点で台北101を映した短い映像を公開し、「とても近く、とても美しい、いつでも台北へ行ける」との字幕を付けた。観光的な表現と映像を用い、台湾の首都への容易な接近を示唆することで、包囲や封鎖のイメージを強めた。

中国はまた、ロボットプラットフォームやロボット犬、海空戦力が台湾に集結する様子を描いた人工知能(AI)生成映像も流布させ、CCTVの映像では対ドローン演習や模擬戦場シナリオも紹介した。

これらの映像制作は軍民融合を反映しており、国営スタジオがPLA部隊と協力し、技術的正確性を確保しつつ感情的効果を最大化している。中には明確な操作に踏み込んだ例もある。

12月の演習に関するCCTVの一部映像は、台湾上空の民間航空機をPLAのドローンが追跡したと誤って主張し、台湾国防部はこれを心理戦だと指摘した。こうした編集は現実と虚構の境界を曖昧にし、台湾の防衛に対する信頼を損ね、米国に対しては介入すれば圧倒的な力で対抗するとのシグナルを送る狙いがある。

これらの映像が台湾に与える影響の定量化は難しい。ただ、多くの台湾市民は中共政権を脅威とみなし、現状維持を支持する人が多数を占め、必要とあれば戦う意思があると答える割合も高い。北京の威嚇にもかかわらず、台湾政府は例年通り大規模な年越し行事を開催し、世論が抑止されていないことを示した。

トランプ米大統領は演習について「何も心配していない」と軽視した。HIMARSロケットシステム、対戦車・対装甲ミサイル、徘徊型ドローン、榴弾砲、軍事ソフトウエアを含む総額111億ドルの対台湾武器売却が進んだことは、米国が台湾支援をためらっていないことを示している。

PLAはいつでも台湾侵攻を開始できると主張しているが、今回の訓練や映像でそれは示されなかった。統合作戦や指揮統制、空軍と海軍が戦闘環境下で有効に運用できるか、全システムが実弾運用に耐えるか、敵の攻撃に耐えられるかといった点には疑問が残る。

同時に、これらの映像は、中国の訓練方法、重視する能力、台湾侵攻の構想を明らかにし、米国や台湾にとって貴重な情報となり、対抗準備を可能にしている。

北京が孫子の兵法にならい、真の戦法を隠しつつ別の戦術を誇示しているとの見方もあり得るが、その可能性は低い。軍は実戦で用いる技術や戦略を訓練せざるを得ず、現時点では、PLAが公然と訓練している方法でさえ、戦火の中で実行できるかは不透明であり、まして未訓練の別の戦法を遂行できるかはなおさら不明だ。

経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。
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