中国公安部はこのほど、「ネット犯罪防止法(意見募集稿)」を公表し、3月2日まで社会からの意見募集を開始した。実名制やVPN利用、匿名制、越境ネット規制などを盛り込んだ内容に対し、憲法や立法法に反するとの批判が相次いでいる。
草案は、オンライン上での実名制の徹底を柱とし、海外の携帯電話番号や決済口座の売買も実名制破壊行為として取り締まり対象に含めた。さらに、匿名でのVPN利用や監視回避、関連ソフトや機器の製作・販売・提供、海外情報の取得を支援する行為についても厳罰を科すとしている。
これに対し、法律学者らは草案の法的根拠に疑問を呈している。中国の憲法第40条は通信の自由と秘密の保護を定めており、公安部に法律制定権限はないとの指摘が出ている。
アメリカ在住の法律学者・李玉清氏は、中国の法体系の階層は「法律、行政法規、部門規章」の順であり、法律制定は全国人民代表大会と同常務委員会のみが担うと説明する。
李氏は「公安部は国務院の一部門に過ぎず、法律制定や法案起草の権限はない。犯罪や刑罰に関わる立法は全人代および同常務委員会のみが行える」と指摘し、「手続き上の越権であり、憲法と立法法(りっぽうほう)に抵触する可能性がある」との見方を示した。
海外人権弁護士連盟の呉紹平氏も、法律議案の提出権は全人代主席団や国務院、中央軍事委員会、最高人民法院などに限られており、公安部は含まれていないと強調。「今回の動きは警察主導型国家への進行を象徴する出来事」と批判した。
また、今回の草案は中国のインターネット統治が、これまでのサイバー管理部門中心から公安主導へ移行する可能性を示すとの見方もある。
海外の個人や企業も対象になり得るとされ、中共の意向に沿わない言論やサービスが一方的に違法と判断される可能性を指摘している。
呉氏は、「管轄権を海外にまで拡張しようとしている。中国と取引のある企業や団体は、結果として自己検閲を強める可能性がある」と述べた。
李氏は、VPN規制について「情報取得の自由は憲法が保障する基本権であり、遮断そのものが違憲の可能性がある」と主張する。
公安部は草案の目的をネット犯罪抑止としているが、評論家の間では、通信詐欺などの犯罪が増加する一方で言論空間は縮小しているとの指摘も出ている。
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