日本で働く外国人労働者の増加を背景に、国外に住む親族を扶養する場合の税優遇措置「海外扶養控除」の在り方が改めて注目されている。日経新聞によると、政府は2026年中にも制度の実態調査に着手する方針で、16歳以上の親族を養う納税者の所得税や住民税を軽くする扶養控除に関して調査するという。結果次第では税制見直しの議論に発展する可能性がある。
日本は、海外親族の扶養を明示的に制度に組み込んできた。出稼ぎ労働者や国際結婚世帯の増加を踏まえた配慮とされる一方、税制の公平性や制度悪用のリスクを指摘する声も根強い。
会計検査院は過去の検査で、実態の乏しい多数親族の申告や送金実績が不十分なまま控除が適用されている事例を問題視した。これを受け、2016年には証明書提出義務が導入され、2023年には30~69歳の国外親族を原則対象外とするなど制度は段階的に厳格化されている。
それでも税務当局による実態確認は容易ではない。国税庁が公表した最新の令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の所得税に関する調査等では、約73万6千件のうち半数近く(約36万9千件)で申告漏れなどの非違が確認されている。海外扶養の実態把握は難しく、書面申告が約26%残るなど、税務行政のデジタル化が進む中でも人的確認の負担は続く。政府は2026年中にも詳細な実態調査に乗り出す方針だ。
一方で、外国人労働者の送金の大半が家族支援である事実は、制度の必要性を裏付ける側面もある。海外扶養控除は単なる税優遇ではなく、移民労働者の生活実態を反映した制度ともいえる。
外国人労働者の増加と日本政府の対応
厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者は257万1037人と過去最多を更新した。2015年の約90万人から10年で約3倍に拡大した計算だ。国籍別ではベトナム、中国、フィリピンが上位を占め、技能実習や資格外活動に加え、専門的・技術的分野の在留資格も増加している。
外国人労働者の増加に伴い、本国への送金も急拡大している。2024年の送金額は8,475億円と過去最高を記録し、2025年は年間1兆円規模に達する見込みである。送金の約95%が家族支援を目的とするとの調査もあり、多くの外国人が実際に海外の家族を生活面で支えている実態が浮かぶ。
こうした背景から、日本では国外に住む親族も一定要件を満たせば扶養控除の対象とする制度が設けられてきた。親族関係書類や送金証明書の提出が必要だが、国外居住親族を税法上明示的に扶養対象に含める制度は、国際的に見ると例外的な位置づけだ。
海外の対応
OECD諸国では、家族状況を税制に反映させる手法として扶養控除や税額控除、現金給付などが存在するが、多くは「国内居住家族」を前提としている。欧州では児童手当や税額控除が主流で、国外居住家族への優遇は限定的である。EU域内では差別禁止原則から一定の適用が認められる場合もあるが、所得の大半を居住国で得ているかといった追加条件が課されることが一般的だ。
ドイツやフランスなどでは、家族関連の税優遇を受けるには居住地や所得割合に関する厳格な条件を満たす必要があり、国外扶養は例外的扱いにとどまる。米国でも扶養控除や児童税額控除は存在するが、対象は原則として納税者と同一の税務居住圏内にある家族に限定される。
政府の実態調査は、こうした共生と公平の両立を検証する意味合いを持つ。2026年度税制改正大綱では海外扶養控除への追加規制は盛り込まれなかったが、調査結果次第では次期改正で議論が再燃する可能性がある。
外国人労働者が社会の基盤を支える存在となる中、海外扶養控除は税務技術論を超えた政策課題となっている。国際的には例外的とされる制度を維持するのか、それともOECD型の限定的枠組みに近づけるのか。人口減少社会の日本にとって、その選択は移民政策の方向性を映す試金石となりそうだ。
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