イランは3月19日、湾岸アラブ諸国のエネルギー・インフラへの攻撃を激化させた。サウジアラビアの製油所、カタールの液化天然ガス(LNG)施設、およびクウェートの2つの石油製油所を攻撃し、このエスカレーションによって石油価格は大幅に上昇した。
市場が中東の供給に対する脅威の拡大に反応したため、指標となるブレント原油は木曜早朝の取引で、3月9日に記録した3年半ぶりの高値に近い1バレル119ドル以上に上昇した。また、米国のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)も一時100ドルを突破した。
今回のイランによる攻撃は、3月18日にイスラエルが世界最大級の天然ガス埋蔵量を誇るイランのサウスパースガス田を攻撃したことを受けたものである。テヘラン(イラン当局)は報復を誓い、民間人に対し湾岸全域の主要エネルギー・インフラに近づかないよう警告していた。
イランイスラム革命防衛隊(IRGC)が標的として特定したのは、サウジアラビアのサムレフ製油所とジュベイル石油化学コンプレックス、アラブ首長国連邦(UAE)のアル・ホスンガス田、そしてカタールの主要な石油化学施設である。
IRGCは準国営のタスニム通信が掲載した声明の中で、「これらの拠点は直接的かつ正当な標的となり、今後数時間以内に攻撃されるだろう」と述べた。
イランは木曜日にこれを実行に移し、紅海の港町ヤンブーにあるサムレフ製油所をドローンで攻撃した。また、複数のドローンがクウェート石油公社のミナ・アル・アフマディ製油所とミナ・アブドラ製油所を直撃し、両地で火災が発生した。
サウジアラビアは、世界経済の石油流通の約20%が通過する重要航路であるホルムズ海峡を回避するため、すでに原油輸出を紅海経由の西向きルートに切り替えていた。ホルムズ海峡は、米国・イスラエルによる攻撃への報復としてイランが事実上封鎖している。アラムコとエクソンモービルの合弁事業であるサムレフへの攻撃は、この代替ルートの安全性に新たな懸念を抱かせている。
サウジアラビア当局は、損害状況を評価中であるとし、現在は王国最大の原油輸出拠点となっているヤンブーを標的とした弾道ミサイルを、防空システムが迎撃したと発表した。
また、イランの弾道ミサイルはリヤドも標的とした。これを受け、サウジアラビアの外相は、サウジアラビアにはイランに対して軍事行動を起こす権利があるとし、テヘランとの信頼関係は完全に打ち砕かれたと述べた。

「イランによるこの圧力は政治的、道義的に裏目に出るだろう。必要と判断されれば、我々は当然、軍事行動をとる権利を留保している」と、ファイサル・ビン・ファルハーン外相は3月18日の記者会見で語った。これは、開戦から約3週間の中でサウジアラビアが発した最も厳しい言葉である。
他の攻撃では、UAE沖で船舶が炎上し、カタール沖でも別の船舶が損傷した。これは、イランが掌握するホルムズ海峡における海運への持続的なリスクを浮き彫りにしている。カタール当局は、イランのミサイル攻撃を受けた主要LNG施設での火災を消防隊が鎮火したと発表したが、生産停止中だった同施設に今回の攻撃でさらなる火災と損傷が生じたと付け加えた。
クウェートでは、ドローン攻撃により、日量約73万バレルの処理能力を持つ地域最大級のミナ・アル・アフマディ製油所で火災が発生し、近隣のミナ・アブドラ製油所でも別の攻撃により火災が起きた。UAEでは、当局がハブシャンガス施設とバブ油田での操業を夜間の攻撃を受けて停止したと発表し、これを「危険なエスカレーション」と呼んだ。
イランの攻撃はイスラエルによる主要ガス田への攻撃に続くもの
今回の一連のイランによる攻撃は、カタールと共有する世界最大の海洋ガス田のうち、テヘラン側が所有するサウスパースへのイスラエルの攻撃に続くものである。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、サウスパースの拠点はイランのエネルギーシステムの中心であり、電力の約80%を供給し、家庭の需要を支えている。

イランはこの攻撃を非難し、マスード・ペゼシュキアン大統領は「全世界を巻き込みかねない、制御不能な結果」を招くと警告した。
トランプ米大統領は、サウスパースへの攻撃はイスラエルが「中東で起きたことへの怒りから」行ったものであり、自身の関知しないところで実行されたと述べた。彼は、イスラエルが同施設を「激しく攻撃した」が、ガス田を再び攻撃することはないだろうとした。その上で、もしイランがカタールのエネルギー・インフラへの攻撃を続けるなら、米国は報復として同ガス田を「全体的に大規模に爆破する」と警告した。
「イランの将来に及ぼす長期的影響を考え、これほどの暴力と破壊を許可したくはない」とトランプ氏はSNSに投稿した。「しかし、もしカタールのLNGが再び攻撃されるなら、私は躊躇なくそうするだろう」。
アナリストらはエポックタイムズに対し、エネルギー・インフラへの攻撃による混乱の規模とイランによるホルムズ海峡の封鎖は、ここ数十年間で最も重大なエネルギー・ショックの一つにつながる可能性があると語っている。
オープンソース・インテリジェンスと国家安全保障に焦点を当てている「バベル・ストリート」のインテリジェンス・ソリューション担当シニア・ディレクター、ジェシカ・ルイス・マクフェイト氏は、ショックの深刻さは供給量そのものよりも、紛争の推移に左右される可能性があると指摘した。
「今、危機に瀕しているのはホルムズ海峡だけではない」と、元米軍兵士である同氏はエポックタイムズに語った。
彼女は、安価なイラン製ドローンによるデータセンターへの攻撃について、他国のインフラを標的にする際、「人を殺傷しない形での報復」がどのようなものになり得るかという、攻撃の性質そのものを変えるものであると述べた。

イランは、ホルムズ海峡は開放されているが、米国とその同盟国に対してではないと述べている。一部の船舶は航行しているものの、その数は極めて少ない。
イランのアッバス・アラグチ外相は、現在の紛争が終結した暁には、この主要航路の通航を管理するための新たな国際的枠組みを構築すべきだと述べた。
3月18日のアルジャジーラとのインタビューで、アラグチ氏は、海峡に面した諸国が、特定の条件下で安全な航行を保証するプロトコルを交渉すべきだとし、それが「戦争の再発を防ぎ、永続的な平和を保証する」方法であると述べた。
アラグチ氏は詳細については言及を避けたが、条件を問われると、長期的な地域の安定を確保し、将来の危機において戦略的航路が閉鎖されるのを防ぐものでなければならないと答えた。
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