財務省と経済産業省は22日、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズに対し、牧野フライス製作所の買収(TOB)計画を中止するよう外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき勧告した。防衛産業の基盤となる工作機械技術の流出懸念が背景にあり、異例の対応となった。
外為法は、海外の企業や投資家が日本の安全に関わる重要事業を行う企業の株式を一定以上取得する場合、政府の事前審査を受けるよう定めている。MBKパートナーズは北アジアに特化した独立系ファンドであり、ソウルや東京だけでなく、中国の北京や上海にもオフィスを構えている。
懸念の根本にあるのが、中国で2017年に施行された「中華人民共和国国家情報法」の存在である。同法第7条は「いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と規定している。
MBKが牧野フライスを買収した場合、中国拠点が中国政府から情報提供を求められれば、法的義務としてそれに従わざるを得ないという構造的リスクが生じる。片山さつき財務相が23日の参議院財政金融委員会で述べたように、政府はこれを「国の安全の確保等にかかる技術または情報が流出する可能性」として重く受け止め、外為法上の安全保障上の懸念があると判断した。
政府が強い危機感を示した背景には、対象企業が持つ技術の特異性がある。牧野フライス製作所は世界有数の工作機械メーカーであり、同社の製品は我が国の防衛装備品の製造事業者に広く利用されている。
最近、日本はサプライチェーン保護や技術流出防止の観点から経済安全保障を強化している。経済産業省によると、2022年12月には経済安全保障推進法に基づき、工作機械や産業用ロボットを含む11物資を「特定重要物資」に指定した。
国家の防衛生産基盤の維持が急務となる中、中国に拠点を持つファンドを通じた防衛産業の中核企業への介入は、経済安保法・外為法の観点からも、安全保障の環境が変化し防衛産業の基盤強化が進められる潮流という地政学的観点からも容認できないリスクと見なされ、今回の中止勧告に至ったとみられる。
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