中国マネーロンダリング網が世界を脅かす 年間2兆ドル規模の資金洗浄か

2026/06/12 更新: 2026/06/12

米下院金融サービス委員会は9日、公聴会を開き、中国マネーロンダリング網(CMLNs)がメキシコの麻薬カルテルにとって「支配的なマネーロンダリング・パートナー」と化していることを明らかにした。専門家は、中国マネーロンダリング網が年間に「洗浄」する資金は最大2兆ドルに上る可能性があると推計している。

監督・調査小委員会委員長で共和党ダン・ミューザー議員は冒頭陳述で、これらの組織は通常の街頭犯罪組織ではなく、米国の金融システムを通じて数十億ドルを移転させる専門的なマネーロンダラーであると強調した。

「今や中国マネーロンダリング網は、麻薬カルテルにとって支配的なマネーロンダリング・パートナーとなっている」とミューザー議員は述べている。

ミューザー議員はさらに、これらの組織がほぼ即時の送金サービスを提供し、手数料が極めて低く、資金が捜査機関に押収された場合でも確実に支払いを保証すると犯罪組織に約束していると説明した。麻薬カルテルにとっての魅力は明らかだ、と指摘した。

専門家 中共が支配する中国は世界最大のマネーロンダリング脅威

専門家証人として出席した米財務省のジョン・カサーラ元特別捜査官は書面証言で、没収資産や有罪判決などの重要指標で測れば、現行のマネーロンダリング対策は失敗していると述べた。

カサーラ氏は、世界の年間マネーロンダリング規模は推計3兆〜5兆ドルに上るものの、犯罪収益として押収・没収に成功するのは1%未満にとどまると指摘した。主として問題の規模が大きいため、マネーロンダリング取り締まりは99.9%の場合において失敗に終わると述べた。

この失敗は偶然ではなく、犯罪手法の進化が既存の法制度や捜査手段をはるかに上回っているためだとカサーラ氏は説明した。

カサーラ氏はさらに、中華人民共和国は世界最大の国際犯罪主体かつマネーロンダリングの脅威となっていると指摘した。なお、彼が言う「中国」とは中国共産党による中華人民共和国統治機構の支配を指すものであり、中国人民を指すものではないと強調した。

カサーラ氏は、「特定違法活動」(SUAs)を基準に算出すると、中国は年間約2兆ドルの不正収益を世界経済に流入・洗浄しており、これは世界の年間マネーロンダリング総額の約半分に相当すると警告した。

「北朝鮮と同様、今日の共産主義中国は腐敗した党国家政権であり、広大な犯罪事業群を抱えている。犯罪活動は、中共が自らの権力を拡大する総合戦略の一環となっているようだ」とカサーラ氏は述べた。

カサーラ氏の調査によると、世界12分野の主要国際犯罪のうち11分野で、筆頭犯罪勢力は「中共グループ」である。犯罪分野には、偽造品・知的財産窃取、人身売買・密入国、麻薬密輸、野生動物密輸、違法伐採、違法漁業、違法タバコ、貿易詐欺、武器密輸・大量破壊兵器拡散、生体臓器摘出、汚職・腐敗が含まれる。

低手数料・即時送金 中国マネーロンダリング網が「市場を独占」

カサーラ氏は、中国マネーロンダリング網がメキシコの麻薬カルテルの資金移転を支援する事例が増えていると警告した。かつてのコロンビア型ブラック・マーケット・ペソ交換モデルでは仲介業者の平均手数料が約15%だったのに対し、中国マネーロンダリング網の平均手数料は1〜2%であり、取引速度は「ほぼ瞬時」だと指摘した。

これらの組織はあらゆるリスクを自ら引き受け、犯罪組織への支払いを保証しており「低コスト・低リスク・即時入金」というモデルにより、中国マネーロンダリング網は麻薬密輸の資金洗浄市場で急速に優位性を確立し、麻薬カルテルが好む取引相手となっている。

「邪悪な連合」の原動力 中共の外貨規制とマネーロンダリング需要

カサーラ氏はこの関係を「邪悪な連合」と表現した。

中共当局が長年にわたり厳格な資本規制を実施し、1人当たり年間5万ドルを上限に外貨の購入・送金を制限してきたため、中国側に米ドルへの強い需要が生じていると証言で指摘した。

「中国の抑圧された米ドル需要と、麻薬カルテルによるドル収益の処分ニーズが、中国のマネーロンダラーとメキシコの麻薬カルテルの間に『邪悪な連合』を生み出している」とカサーラ氏は述べた。

「資金移転と麻薬収益の出所隠蔽には、大量現金の密輸、貿易型マネーロンダリング、鏡像スワップ、暗号資産、ウィーチャットペイ(WeChat Pay)・アリペイ(Alipay)などのデジタル決済プラットフォーム、ペーパーカンパニー、不動産など幅広い手法が用いられている」と述べた。

カサーラ氏は特に「鏡像スワップ(Mirror Swaps)」の手法に言及した。これは現金を物理的に国境越しに移動させることなく、異なる地点間で等価の資金を相殺することで、金融当局や捜査機関による摘発リスクを低減する資金洗浄手法だ。

この手法では、犯罪組織が米国内で麻薬収益である米ドル現金をカルテルと協力関係にある中国人マネーロンダリング仲介業者に手渡す。同時に、取引の相手方が中国国内の口座や中国決済アプリを通じて等価の人民元を指定口座に送金する。その後、この価値はカルテルの指示に従いメキシコその他の地点に転送される。

中国マネーロンダリング網がフェンタニル危機を悪化

公聴会ではこれらの資金洗浄活動と現在の米国フェンタニル危機の密接な関係が繰り返し指摘された。ミューザー議員は、中国マネーロンダリング網が麻薬カルテルによるフェンタニル製造用前駆体化学物質の調達においても重要な役割を担っていると指摘した。フェンタニルは現在も18〜45歳の米国人の主要な死因となっている。

ザック・ナン共和党議員は「中国マネーロンダリング網は、私たちの地域社会を毒する犯罪組織の銀行業者と化している。現在も米国内で活動するペーパーカンパニー4万社以上を含む。洗浄された1ドル1ドルが、より多くのフェンタニル、より多くの武器、より多くの麻薬を購入し、直接わが国に流入してくる」と明言した。

ナン議員によると、中国マネーロンダリング網は麻薬カルテルへの金融サービス提供にとどまらず、北朝鮮のハッカー集団、イラン関連活動、テロリズム、ロシアの犯罪組織に対する資金洗浄も行っているという。

実際の摘発事例を見ると、これらの網の浸透の深さが明らかだ。

「オペレーション・フォーチュン・ランナー(Operation Fortune Runner)」では、中国地下銀行に関連するカリフォルニア州のマネーロンダリング網が摘発され、シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)の麻薬収益5000万ドル超を洗浄した疑いが持たれている。

また、マネーロンダラーは中国人留学生を運び役として利用し、米国内の銀行に名義口座を開設して不正資金を処理させていることも判明した。

「犯罪のシルクロード」

前米国南方軍(SOUTHCOM)上級顧問でラザラス・コンサルティング社のリーランド・ラザラス代表は、中国犯罪網の世界的活動を「犯罪のシルクロード」と呼んできたと述べ、こうした活動が南北アメリカ大陸でも増加していると証言した。

ラザラス氏はいくつかの事例を列挙した。ブラジルでは、検察・警察が2026年初頭に地元最大の犯罪組織PCCと連携した中国系電子機器流通網を摘発し、わずか7か月間で約1億9千万ドルの資金洗浄が確認された。

チリでは、捜査機関がFBIと共同で「オペレーション・オラ・セロ(Operation Hora Zero)」を展開し、自由貿易地域内で活動する中国系金融犯罪グループを捜査した結果、多い場合で112社に上るペーパーカンパニーを利用した資金洗浄が判明した。

カナダでは、金融取引・報告分析センター(FINTRAC)の「プロジェクト・アテナ(Project Athena)」が地下銀行スキームに関連する約4万8千件の取引を分析し、多数が中国、特に香港からの送金を含むことが確認された。

ラザラス氏は、このパターンが示すのは、専門的なマネーロンダラーが中国の資本規制回避、在外華人信頼ネットワーク、運び屋、名義購入者、高級品購入、不動産取引、不透明な専門サービスを駆使して犯罪収益を活用可能な資産に転換していることだと指摘した。

取り締まりの現状と今後の提言

トランプ政権はすでに8つの犯罪組織を外国テロ組織に指定し、大型マネーロンダリング案件の起訴を相次いで進めている。ただ公聴会の専門家は、より包括的な戦略の必要性を訴えた。

ラザラス氏は、中国のマネーロンダリング問題を米中二国間関係の重要議題に格上げし、マネーロンダラーによるペーパーカンパニーを通じた資金源隠蔽に対抗するため、「企業透明法」に基づく受益的所有権の報告制度を強化すべきだと提言した。

カサーラ氏は連邦・州・地方の捜査機関のリソースを統合した省庁横断的な専門タスクフォースの設置を主張し、「米政府・捜査機関には、中国の国際犯罪に対処する包括的戦略を策定するため、全省庁一体となった取り組みを求めたい」と述べた。

現在、下院監督・調査小委員会はこれらのマネーロンダリング組織の全容解明と、立法・量刑強化などの手段による壊滅策の検討に向けた追加調査を進めている。

陳霆
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