「安かろう悪かろう」、「安すぎるものには裏がある」。そんな言葉を思い出させる出来事が中国で起きた。
1本約1円の激安歯ブラシの原料に使われていたのは、想像を絶するものだった。
中国メディアの調査報道によると、古いスリッパや廃棄マスク、化学薬品の容器、壊れた家電などを原料にした再生プラスチックが、使い捨て歯ブラシの持ち手部分に使われていたことが明らかになった。
しかも、こうした歯ブラシは特殊な闇市場で売られているわけではない。主に小規模ホテルや民宿向けの商品として、大量に市場へ流通しているという。
調査では、化学薬品が入っていた容器、家電のパネル、扇風機のカバー、壊れたローラースケート、古い歯ブラシの柄などが回収され、そのままプラスチック加工工場へ運び込まれていた。
さらに驚くことに、廃棄マスク、スリッパの切れ端、ビニールシート、化学肥料袋、黒いゴミ袋、プラスチック製のロープなども原料として使われていた。
そして、今回の問題で特に衝撃的なのは、その工程だ。
これらの廃棄物は十分な洗浄や消毒を行っていなかった。単純に粉砕し、高温処理を施した後、簡易的なフィルターを通すだけで再利用していた。
当然ながら、さまざまな原料が混ざるため、再生したプラスチックはまだら模様になる。そこで業者は色の粉末を混ぜ、赤、青、白、黒など均一な色に染め上げて販売していた。
つまり、見た目だけでは新品なのか、廃棄物由来なのか、消費者にはまったく見分けがつかないのだ。
こうして作った歯ブラシは、工場出荷価格で1本わずか0.06元(約1円)。業界関係者も「品質は良くなく、折れやすい」と認めており、主な販路は小規模ホテルや民宿だ。
専門家は中国メディアに対し、「危険なのは、何を原料として使っているのか分からないことだ」と警鐘を鳴らす。何度も回収したプラスチックは成分が複雑で、高温で加工する際に新たな有害物質を生じる。さらに、こうした有害成分が体内に入り込み、健康被害につながる恐れもある。
ただ、ここで一つ誤解してはいけないことがある。
問題なのは「再生プラスチック」そのものではない。
日本でも環境負荷を減らすため、さまざまな製品で再生プラスチックを使っている。しかし、原料の出所や安全性を厳しく管理したうえで再利用している。
今回、中国で問題になっているのは、出所の分からない廃棄物が、十分な洗浄や安全管理もないまま、口に入れる製品になっていることだ。
ホテルに置かれた1本の歯ブラシ。普段なら何も考えず手に取って終わりだろう。しかし、その何気ない日用品の裏側で何を使い、どんな工程で作っているのか。今回のニュースは、「安さ」の本当の意味を改めて考えさせるものだった。
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