北陸新幹線「桂川案」を採用 時間短縮の効果と建設費 地下水の課題

2026/07/16 更新: 2026/07/16

与党の整備委員会は15日、北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸をめぐり、「小浜・京都ルート」のうち、京都市南西部を通る「桂川案」を採用すると決めた。

桂川案は、福井県小浜市を経由し、京都駅から約5キロ離れたJR桂川駅付近に地下の新駅を設けて新大阪方面へ結ぶ計画である。京都駅周辺の地下を直接通る案と比べ、京都中心部の地下水や文化財への影響を抑えやすいとされる。

北陸新幹線を新大阪まで延伸する目的は、敦賀駅での乗り換えを解消し、北陸と関西を新幹線で直接結ぶことにある。移動時間を短縮して観光や経済交流を促すほか、東海道新幹線が災害などで運休した際の代替ルートを確保する狙いもある。

一方、桂川案には、京都駅に直結しないことによる利便性の低下や、巨額の建設費、長期にわたる工事、地下水への影響など、実現に向けた課題も多い。

大阪方面は約45分短縮

全線開業後、新大阪―金沢間の所要時間は、現在の約2時間5分から約1時間20分となり、約45分短縮される見込みである。過去の小浜・京都ルートの試算では、敦賀―新大阪間は約43~44分、福井―新大阪間は約55分とされている。

ただし、これらは桂川案の具体的な運行ダイヤを反映した確定値ではない。

また、時間短縮の効果は主に大阪方面へ向かう利用者が受ける。桂川案では京都駅に直接乗り入れないため、京都駅を利用する場合は在来線への乗り換えが必要となる。

国の試算では、桂川の新幹線駅から京都駅までは、乗り換え時間を含めて約19分を要する。列車の待ち時間によっては、京都方面の実質的な時間短縮効果がさらに小さくなる可能性がある。

新駅と既存のJR桂川駅との乗り換え動線や、京都駅までの移動時間、周辺道路の混雑対策も今後の検討課題となる。

建設費は約3兆9千億円

桂川案の建設費は約3兆9千億円、工期は約26年と見込まれている。資材価格や人件費がさらに上昇した場合や、地下工事で想定外の対策が必要になった場合には、事業費や工期が一段と膨らむ可能性がある。

国交省の試算では、費用便益比は、既開業区間を含む北陸新幹線全体で1.1となる一方、今回整備する敦賀―新大阪間だけでは0.5にとどまる。巨額の建設費に見合う効果が得られるかは不透明だ。

京都側の負担は未解決

整備新幹線の建設費は、JRが支払う貸付料などを除き、原則として国と沿線自治体が分担する。

京都府知事と京都市の松井孝治市長は、延伸自体には理解を示す一方、「京都側から誘致したものではない」として、地方負担の軽減を求めている。

松井市長は、財政負担が「将来の京都市民の様々な社会基盤整備を大きく制約しかねない」と懸念を表明しており、負担額のあり方が今後の焦点となる。

桂川周辺でも地下水に懸念

桂川案は京都中心部を通る案よりも環境への影響を抑えやすいとされる。検討された京都市内の案の中では路線が比較的短く、京都駅周辺の複雑な地下工事や、中心部の文化財への影響を避けやすい点も利点である。

ただし、地下水への懸念が解消されたわけではない。

京都盆地の地下水は、日本酒や豆腐、和菓子、染色などの産業や生活用水に利用されている。大深度地下に駅やトンネルを建設することで、地下水の流れや水位が変化し、井戸の水量や水質、周辺の建造物の地盤に影響が出る恐れがある。

京都駅周辺の寺社や歴史的建造物への影響は避けやすくなる一方、桂川駅周辺の住宅や商業施設、鉄道施設への影響を慎重に検証する必要がある。

着工には地元の理解が不可欠

桂川案の採用で延伸計画は一歩前進したが、直ちに着工できるわけではない。

建設費の負担方法や地下水への影響、残土の処理、工事中の交通や騒音対策について、京都府、京都市、沿線住民の理解を得る必要がある。

大阪方面への移動時間を大幅に短縮できる一方、京都駅には直結せず、整備区間単独の費用便益比も1を下回る。桂川案が巨額の費用や環境への負担に見合う効果を示せるかが、今後の焦点となる。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。
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