中国経済が悪い、中国では失業者が増えている。そんなニュースを目にする機会が増えた。
だが、日本にいると少し実感しにくい。街には、相変わらず羽振りのいい中国人観光客の姿もある。AIやEVでは中国企業の勢いも伝えられる。
「本当にそこまで景気が悪いのか」。実はいま、中国国内でも似た疑問が起きている。
政府は経済成長を強調する。一方、国民から聞こえてくるのは「仕事がない」「商売にならない」「家の値段が下がった」「カネがない」という声だ。
中国では、この食い違いを「経済温度差」と呼んでいる。
中国共産党の理論誌『求是』はこのほど、この問題を取り上げた。政府の経済統計を「体温計」、国民の生活実感を「体感温度」にたとえ、「どちらも真実だが、測っている角度が違う」と説明した。
つまり、政府の数字と国民の実感が違っていても、おかしくないという主張だ。
しかし、その説明に納得しない人も多い。ネットでは「要するに数字をごまかしているのでは」といった批判が相次いだ。
時事評論家の李林一氏も本紙に対し、経済の厳しさを国民に見抜かれたため、党メディアが説明に乗り出したにすぎないと指摘する。
実際、公式発表にも厳しい数字が並ぶ。
中国財政省が7月22日に公表した上半期の財政状況では、すべての省で自主財源だけでは支出を賄えなかった。
また、中国当局によると、4~6月期の経済成長率は4.3%と、1~3月期の5%から鈍化し、市場予想の4.5%も下回った。
米国の経済学者、黄大衛氏は本紙に対し、「数字を水増ししても、景気の悪さを隠せないところまで来た」と指摘した。
さらに中国では、こうした「数字と実感のズレ」を指摘すること自体が難しい。昨年、中国メディアに掲載された「経済温度差」を分析する記事は削除され、政府発表の成長率に疑問を呈した著名な経済学者も、その後、発言の場を奪われた。
それが今、共産党の機関誌自身が「温度差」の存在を説明し始めている。
中国経済が明日突然崩壊するという話ではない。しかし、仕事が見つからない、家が売れない、お金がないという人が増えれば、中国という巨大市場の冷え込みは日本企業や観光、小売にも波及する。
遠い国の話に見えて、中国経済の「寒さ」は日本とも無関係ではない。
政府が「体温計は正常だ」と説明しても、そこで暮らす人々が「寒い」と感じている。共産党がわざわざ「なぜ数字と暮らしの実感が違うのか」を説明しなければならなくなった。そのこと自体が、中国経済の厳しさを物語っている。
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