ネパールで中国人男性が奇跡の生還 中国側では生存者見つからず

2026/09/07 更新: 2026/09/07

中国とネパールの国境で土石流災害が発生してから11日が経った。

国境を挟み、両国の救助状況には大きな差が出ている。ネパール側では相次いで生存者が救出され、9月5日には河南省出身の出稼ぎ労働者が救助された。一方、チベットの吉隆国境検問所側でも沢山の人が行方不明となっているが、これまでに生存者は1人も見つかっていない。多くの家族が今も安否の知らせを待ち続けている。

こうしたなか、官製メディアが軍による被災地での炊事を大きく取り上げたことに、ネット上では批判の声が上がっている。

トンネル内で11日間 河南省出身の男性をネパール側が救出

ネパール警察は9月5日、現地時間5日未明までに被災地で1344人の遺体が見つかり、4898人が行方不明になっていると発表した。

災害発生から5日後の8月30日、ネパールの災害対応機関は、約2万人の治安・救助要員を投入し、8730人を救助したと明らかにした。

一方、新華社通信によると、9月4日午後6時時点で、中国側の死者は31人、行方不明者は531人に上る。

9月5日、ネパールのアッパー・トリシュリ1水力発電事業の全長225メートルのトンネル内から、中国人男性1人を救出した。同トンネルから生還したのは3人目となる。

ネパール軍によると、男性に目立った外傷はなく、容体は安定していた。軽い低体温症の症状が見られたため、ヘリコプターで軍病院に搬送し、治療を受けている。

ネパール軍や中国メディアによると、救出したのは河南省安陽市出身の陸海濤(ルー・ハイタオ)さん(49)である。

9月5日午後、中国とネパールの国境で行方不明となった人の家族が参加するグループチャットに、ボランティアがネパールメディアの記事のスクリーンショットを投稿した。そこには、中国人1人を建設現場から救助したと記していた。

救出された男性を家族が確認

当初、記事の写真が不鮮明だったため、陸さんの姉は救出の人物が弟なのか確信を持てず、名前を確認できないか尋ねていた。

その後、ボランティアがより鮮明な写真を送ると、陸さんの息子はすぐに「父です。よかった!」と話したという。

陸さんの姉によると、一家は代々農業を営み、陸さんも主に小麦やトウモロコシを栽培してきた。農閑期には大工仕事などで家計を支えていた。

妻は体が弱く、重労働ができないため、一家の暮らしに大きな余裕はなかったという。今年初め、陸さんは同じ村の男性とともに初めて海外へ出稼ぎに出て、ネパールに渡った。しかし、現地では通信環境が悪く、家族との連絡はほとんど取れていなかった。

陸さんの姉は中国メディア「紅星新聞」に対し、土石流発生後、家族は不安を抱えながら知らせを待ち続けていたと説明し、生存が確認できたことについて「とても感激している」と語った。

陸さんは11日間にわたってトンネル内に閉じ込められ、飲まず食わずの状態で耐えていたという。救出時には大きく痩せ、かなりやつれていた。

家族はまだ本人と直接話せておらず、今後、首都カトマンズに移送し、詳しい検査を受ける必要があるという。

中国側では生存者見つからず 当局の説明に疑問

ネパール側で相次いで生存者を救出する一方、中国側では依然として生存者を確認していない。

官製メディア「チベット日報」は、救援活動に参加する専門家の話として、今回の災害は一般的な土石流ではなく、氷の崩落や岩石・土砂の流出、土石流が連続して起きる複合災害だったと報じた。

流速は秒速50メートルに達した可能性があり、中心部では堆積物の厚さが平均約4メートル、最大16メートルに達したという。一方、生命探査装置が有効に探知できる深さは2メートル未満で、専門家は捜索を「泥の中から針を探すようなものだ」と説明している。

しかし、こうした説明に対しては、これほど破壊力が強く流れも速い災害だったのであれば、なぜ事前に下流地域へ警報を出せなかったのかとの疑問が出ている。

また、ネパール側も同様に氷や岩石の崩落と土石流の被害を受けながらも、これまでに複数の生存者を救出している。

中国側で行方不明となった人の家族らは大紀元に対し、拉薩や四川省などから被災地へ向かったものの、吉隆県の封鎖で、吉隆国境検問所に入ることができなかったと証言した。

一部の家族は検問所付近で待ち続けたものの、親族の安否について明確な情報が得られない状態が続いたという。

被災地で軍が炊事 「不幸を美談に」と批判

中国共産党中央テレビと新華社通信は9月3日、吉隆国境検問所につながる陸路の救援ルートが2日に復旧した後、軍と武装警察の炊事支援部隊が被災現場に炊事設備を持ち込み、救援要員に温かい汁麺やご飯、大鍋料理、ショウガ湯などを提供していると報じた。

官製メディアは、ぬかるんだ現場で炊事担当者が食事を用意する様子を大きく取り上げ、手厚い後方支援を象徴する場面を強調して報道した。その後、複数の政府系メディアが相次いでこれを転載した。

一部のネットユーザーからは、「一刻を争う救援現場なら非常食などで対応すべきではないか」「野菜を切り、鍋を振ることに手間をかけ、救助活動を遅らせていないか」といった疑問の声が上がった。

また、「不幸を慶事のように扱っている」との批判も出た。多くの行方不明者が見つからず、被害が深刻ななかで、炊事の様子を大々的に宣伝する当局の姿勢を皮肉ったものだ。なかには「墓前で宴会を開いているようなものだ」と強い表現で不満を示す投稿もあった。

一方、当局が公開した映像は、道路の復旧や土砂の撤去、防疫・消毒作業などを映したものが中心となっている。一部のネットユーザーからは、現場映像の信頼性や撮影方法についても疑問の声が上がり、中国側が発信する救援情報の透明性を疑問視する見方も出ている。

災害発生後、ネット上では、当局がメディアに報道内容を統一するよう求めた「宣伝指示」が出回った。

指示には、各メディアは中央メディアが配信する統一原稿のみを転載し、記事の冒頭に「ネパール側で土石流が発生した」と記載すること、ネパール側の死傷者を強調する一方、中国側の被害は抑えて伝えるよう求める内容だった。

中国とネパールで分かれる救援対応 識者「救命より安定を優先」

今回の災害をめぐる中国共産党(中共)とネパールの対応の違いについて、カナダ在住の中国系作家、盛雪氏は大紀元の取材に対し、当局が救命活動よりも情報統制を優先したように見えると指摘した。

盛氏は、ネパールは国力が限られているにもかかわらず、多数のヘリコプターやドローンを捜索・救助に投入し、死傷者や救援状況を比較的早い段階で公表したほか、外部からの支援も受け入れたと述べた。

一方、中国側では、ヘリコプターやドローンを使った同様の救援活動はほとんど見られず、外国メディアや国際救援チームも被災地への立ち入りを認めていないと指摘した。

米ジャーナリストの方偉氏は大紀元に対し、中国側には災害を事前に察知する技術があるものの、警報情報が行政当局に伝わった後、実際の対応につながるかどうかは政治判断に左右されると指摘した。

方氏は、中共指導部が最も重視しているのは政治的安定だと述べた。

「だから、外国の救援隊が中国を支援できる状況であっても、中共はそれを必要としない。一般市民の生死よりも、政治的な安定の方が重要だからだ」

李淨
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