「報復は怖い」 中国のホルムアルデヒド白菜を追った告発者

2026/08/28 更新: 2026/08/28

河北省張家口市康保県で発覚した遺体保存剤の「ホルムアルデヒド液に浸したに白菜」問題が、引き続き注目を集めている。問題を告発したブロガーは中国メディアの取材に対し、2か月以上にわたって追跡と調査を重ね、ようやく現場を突き止めたと明かした。一方で、報復への不安も口にしている。

8月22日、中国のブロガー「漁獵齊哥」は現地調査の動画を公開し、一部の白菜が買い付けや積み込みの際、鮮度保持のためにホルムアルデヒド溶液で処理されている実態を明らかにした。

地元当局が確認したところ、動画の内容は事実だった。当局は、買い付け業者が輸送中の鮮度を保つ目的で、白菜の積み込み時に行っていた違法行為だとしている。

問題の発覚後、「漁獵齊哥」は多くのネットユーザーから食品安全の「告発者」として注目を集めた。本人は最近、中国メディア「藍鯨新聞」の取材に応じ、調査の経緯を詳しく語った。

一件の情報提供から始まった

「漁獵齊哥」のもとに関連情報が寄せられたのは6月13日だった。

情報を確認した本人と仲間は、さらに調べる必要があると判断した。ただちに産地へ向かうのではなく、まず消費地の市場から調査を始め、白菜をサンプルとして検査に出した。

その後、検査結果や仕入れ先などの情報をもとに流通経路をさかのぼり、産地での買い付けから積み込み、長距離輸送に至るまでの流れを調べた。

調査を続けた結果、最終的に河北省張家口市康保県にたどり着いた。

産地に入り証拠を撮影

康保県に到着した調査チームが白菜の積み込み現場に入った際、特に妨害を受けることはなかった。

現場の作業員もカメラを避ける様子はなく、白菜の根元を透明な液体にさっと付けてからトラックに積み込む様子を撮影できた。現場で使われていた容器には「ホルムアルデヒド溶液」と記されていた。

「漁獵齊哥」によると、当初は慎重に撮影していたが、次第に撮影していても誰も気にする様子がないことに気づいた。

本人は、現場ではこうした作業が常態化していたのではないかと話した。

ただし、すべての輸送車両でホルムアルデヒド溶液を使った処理が行われていたわけではないという。主に長距離輸送向けの白菜で行われ、近距離輸送では鮮度保持のための処理は必要なかったと説明した。

トラックを追跡 江蘇、安徽まで

白菜が最終的にどこへ運ばれるのか確認するため、調査チームは二手に分かれた。

一方のチームは野菜を積んだトラックを追い、江蘇省や安徽省方面へ向かった。産地から販売先まで流通経路を追跡するためだ。

トラックが目的地の市場に到着すると、調査チームは警察に通報した。その後、問題の白菜は差し押さえられ、事件は全国的な食品安全問題として注目を集めた。

「漁獵齊哥」が今回の調査で特に衝撃を受けたのは、ホルムアルデヒド溶液が使われていたことだけではない。こうした作業がほとんど隠されることなく行われていた点だったのだ。

長年このような作業を目にしてきた関係者がいるにもかかわらず、誰も異議を唱えたり通報したりしなかったのであれば、問題は個々の業者だけでなく、業界全体の慣行にも及ぶと指摘した。

「当たり前になっていた」からといって、違法行為が許されるわけではないとの考えを示した。

一方、問題の発覚によって、ホルムアルデヒドを使用していない地元農家まで影響を受け、白菜が売れなくなるのではないかとの懸念も出ている。

これについて「漁獵齊哥」は、批判や圧力も感じていることを認めた。

ただ、産地で違法な行為が長期間続いていたのであれば、市場への影響を完全に避けることは難しいとの考えだ。

「私が告発しなければ、彼らはホルムアルデヒドを使い続け、その白菜を売り続ける。その方が消費者にとっては深刻だ」と語った。

年間約50件の問題を明らかに

「漁獵齊哥」はかつて不動産業界で働いていた。自然が好きで、環境汚染や不正を嫌ったことから、次第に環境汚染や食品安全問題の調査に取り組むようになった。

これまでネットユーザーから寄せられた情報をもとに各地へ足を運び、現地調査や撮影、証拠収集を続け、その結果を動画で公開してきた。

本人によると、年間およそ50件の問題事例を明らかにしている。

調査のため、一年を通じて中国各地を飛び回る。今年5月だけでも、湖南、湖北、江西、山東、河南、河北、四川、重慶、貴州などを訪れた。

報復への不安も「誰かが声を上げなければ」

環境問題や食品安全問題を長年調査するなか、報復を恐れることはないのか。

「漁獵齊哥」は「もちろん怖い」と認めたうえで、「怖いのは怖い。でも、この仕事はやらなければならない。誰かが声を上げなければならない」と語った。

現在、専門の調査チームはなく、主に同じ考えを持つ友人らと協力して活動している。

今回の「ホルムアルデヒド白菜」の調査は、6月に情報提供を受けてから問題を公表するまで2か月以上を要した。検査費だけで2千元以上かかったほか、飛行機や高速鉄道、レンタカーなどの交通費もかさんだ。

しかし本人にとって、金銭以上に大きな負担となるのが時間だという。

調査によってホルムアルデヒドの違法使用を止められるのであれば、それだけの費用や時間をかける価値はあると考えている。

今回の問題が中国全土で急速に注目を集めた背景には、食品安全に対する人々の関心の高まりがあると「漁獵齊哥」はみている。

産地での買い付けから長距離輸送、卸売市場、小売店に至るまで、野菜の安全性は流通のあらゆる段階に関わる問題だ。

今後については、引き続き環境汚染を主な調査対象としながら、食品安全問題についても追っていくとしている。

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