また、東南アジア。
いまや中国では、タイと聞けば誘拐や人身売買、ミャンマーと聞けば詐欺拠点での監禁や拷問、さらには臓器狩りを連想する人も少なくないのではないか。
楽しいはずの海外旅行が、帰れない旅になる。そんな恐ろしい事件が相次いでいる。
今年4月、友人に誘われてタイを訪れた19歳の女子大学生が詐欺拠点に連れ去られ、家族が身代金を払っても解放されなかった。事件が大きく報じられ、世論の圧力が高まった末、拠点側が解放に応じたとされる。
7月には36歳女性が友人の誘いで渡航し、預金約1100万円を奪われたうえ、さらに身代金を要求された。
9月には、ネットで知り合った恋人に会いに来た24歳女性が誘拐され、走行中の車から飛び降りて脱出。
10月にも、ネットで知り合った男性に会いに行った女性や、社員旅行に参加した女性の失踪が報じられた。
同じ月、入社間もない中国人男性も会社の東南アジア旅行中に不自然な動画を投稿。ネットで救出を求める声が広がり、その後、無事帰国した。世論の圧力が帰国につながったとの見方もある。
では、なぜこうした犯罪はなくならないのか。
2025年、中国人俳優の王星さんがタイで仕事をするはずが、ミャンマーの詐欺拠点に連れ込まれた。事件は大きな注目を集め、中国当局は大規模な取り締まりを実施。ミャンマー側も悪名高い巨大詐欺拠点「KK園(KKパーク)」の壊滅を発表した。
ところが、2026年の衛星写真などの調査では、施設の一部が残り、周辺で新たな拠点の建設や拡張が進んでいることが明らかになった。犯罪組織は場所を変え、活動を続けている。
しかも、被害は詐欺だけではない。臓器の摘出・売買、採血の強要、性的搾取、強制的な代理出産なども報告され、乳児の骨髄を「不老薬」の製造に利用しているとの情報まである。
世論の批判が高まるなか、中国国営テレビも、詐欺を強要された末に腎臓を摘出されたと証言する男性の姿を放送した。
中国当局は大規模な取り締まりを繰り返しているが、詐欺拠点はなくなるどころか、再建・拡大を続けている。
その背後には、中国系犯罪組織と中国共産党の有力者、海外経済構想「一帯一路」とのつながりも指摘されている。
米国務省の2026年版『人身売買報告書』によると、詐欺組織は80か国以上から数十万人を誘い込み、暴力や拷問で詐欺を強要。その被害は125か国以上に及ぶという。
米議会も、中国系犯罪組織と中国政府関係者の関係を問題視し、安全保障上の脅威として取り締まり強化を求めている。
何度摘発しても、消えない詐欺拠点。場所を変え、姿を変え、また新たな犠牲者を生み出す。
取り締まる側が犯罪組織とつながっているのなら、摘発のニュースの裏で、いったい何が守られているのか。

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