【大紀元日本1月21日】中国市場撤退の可能性を含むグーグルの中国語サイト検閲拒否の本音は、市場シェアの低下にあるのだろうか。それとも、インターネットの力を確信するグーグルの「夢」の実践なのだろうか。
12日に発表されたグーグル社のGoogle.cn上での検閲拒否を巡って、様々な憶測・予測が飛び交う中、グーグルの今回の動きは、グーグルにとってプラスになるとの見解が示されている。ワシントンポスト傘下の「スレート」誌で、ジャーナリストのファーハド・マンジョー(Farhad Manjoo)氏が、今回こそ、グーグルが「悪になるな」原則で確立されたブランドイメージを回復させ、中国人サーファー達を自由のシンボルであるグーグルの岸辺へガイドするチャンスであると指摘している。
4年前のファウスト的取引
悪魔と契約を交わしてしまったファウスト博士。24年間の知識、権力、お金と引き換えに魂を売り渡した。しかしやがて、早まった行為のもたらしたものに気付く。グーグルの中国市場への進出の選択は、まさにファウスト博士の伝説の現代版。
グーグルは、中国市場に進出したのはお金のためではなく、最大のネット使用者を有する中国社会を変えるためであると常に主張している。2006年、中国語サイトGoogle.cn創設の際、グーグルは検索結果の一部に検閲をかけるという中国共産党政権の要求を受け入れた。当時、世界中から批判が相次ぎ、「悪になるな」(Don’t be evil)というグーグルのブランドイメージが、嘲笑の的となった。
グーグルCEOのエリック・シュミッド氏は、中国市場参入直前に「制限に対する大きな波風は立てていないが、(中国政権の要求を受け入れずに、中国市場に参入しないことによって、)これらのユーザーがグーグルを利用できなくなることの方が『悪』だということが、『悪』のスケール測定を検討した結果判明した」と、2006年1月27日付のネット紙「InfoWorld」に語っている。
中国の検閲の壁は一時的なものであり、より多くの中国国民が自由主義世界の空気を吸えば、徐々にこの検閲の枠組みは取り外されていくだろうというのが、当時の見方だった。しかし、ここ1年、中国当局によるネット上の取り締まりは強化される一方だ。
恐らく、当時のグーグルは、ニクソン元米大統領が始めて共産中国と友好関係を結ぶ際と同じ夢を見ていた。すなわち、中国との触れ合いは、双方にとって有利であり、中国の民衆にも自由と繁栄をもたらす、ということである。しかし、自由世界との関係を利用して、中国経済は発展してきたが、政治体制は全く変わっておらず、共産党中国は依然として世界最大の人権侵害者であり、自由民主価値観を脅かす最大の汚染源となっている。
シェアの落ち込みが撤退の理由?
一部の批評家は、中国内の検索エンジン「百度」(バイドゥ)の市場シェアに打ち勝つことが到底できないグーグルが、検閲拒否を市場撤退の言い訳にしていると分析する。実際、2008年には「百度」63%、グーグル26%と報道されていたが、昨年度第3四半期 は、「百度」は77%に上昇し、グーグルは17%に落ち込んでいる。
しかし、シェアが少なくても中国市場は膨大だ。JPモルガン社は、中国市場での2010年のグーグル社の収益を6億ドルと推定しており、グーグルの長期的な成長にかなりの影響が出ることは否めない。これだけの収益を目の前にして、撤退に踏み切る背後には何があるのだろうか。
グーグルの良心
14日付の米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、今回の決定は、グーグル創設者ラリー・ページ(Larry Page)氏とサージー・ブリン(Sergey Brin)氏の個人的なインプットが大きいとしている。
モスクワ出身のブリン氏は、政府の検閲に協力することへのモラルの葛藤が特に強い。年月を経るにつれ、ブリン氏はグーグルの「良心」とみなされるようになり、グーグルのモットーである「悪になるな」の擁護者の役割を果たすようになった。
中国本土、そして中国政権からのサイバー攻撃の調査は数週間前に始まった。事実を前に、ページ氏、ブリン氏、そして検閲拒否の声明を発表したシュミット氏の三人が熱く討論したという。シュミット氏は、中国国内での事業を続け、中国政権の態度が変わるように努力すべきだと主張。ブリン氏は、中国での操業はできるだけのことはやった。検索結果を検閲する正当性は存在しない、と反論。
グーグルをジレンマに置かせたのは通信技術の用途。人間同士のコミュニケーションを促進させるものではあるが、特定の政権にとっては民衆に対する監視活動の道具でもある。人権活動家ハリス氏曰く、「グーグルの核心の業務は、情報の提供と協調を促進させることだが、中国ではインターネットは、政府によって十数億人をコントロールする道具として使用されている」
結局、サイバー攻撃の事実を表明することで落ち着いた。さらに、人権擁護に関する段落も含めることが決まった。
検閲事業から反検閲事業に
エレクトロニクス・フロンティア基金(Electronic Frontier Foundation)のジョン・ギルモア(John Gilmore)氏の「インターネットは、検閲を破損箇所とみなし、避けて通る」という言葉は有名だ。
中国本土のユーザーにとって、Google.cnだけがGoogleにアクセスできるルートではない。当局が設定するファイアウォールの突破はさほど難しいことではない。プロキシサーバーや格安の仮想プライべート・ネットワークを利用すれば、中国からでもGoogle.comに直接アクセスできる。
つまり、グーグルは依然中国でのビジネスができる。しかし、中国本土からではなく、海外から中国でのビジネスを実行する。
ある中国人がTweeterに書き込んだように、「検閲ビジネスを反検閲ビジネスに変身させる」チャンスがグーグルの前にある。
こう考えれば、グーグルは自社の強みを全面に押し出せることになる。検索エンジンとしての質の高さでは右に出るもののいないグーグル。中国サイトでの検閲を受け入れることで、グーグルは自社の最高の特徴に制限を加えてしまった。検閲のないGoogle.comは、中国人サーファーにとって、真実を知るための究極の検索エンジンとなる。
自由のシンボルであるグーグルの岸辺をサーファー達は目指すことだろう。今回の行動は、一人ひとりの国民が、自由の世界に飛び立つことを促しているのではないだろうか。「中国当局との協力関係では世界を変えることができない。非協力関係こそ世界を変えるカギである」。グーグル社は、今回の件をきっかけに、自社の「悪になるな」方針をバージョンアップする時期だ、と先述のファーハド・マンジョー(Farhad Manjoo)記者は結論を結ぶ。
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