【大紀元日本6月29日】EMS(電子製品の受託製造)世界最大手の鴻海精密工業(台湾)の子会社であるフォックスコン(富士康科技)が、中国広東省深センにある工場の規模を大幅に縮小することを決めた。従業員はこれまでの40万人から数万人に削減し、業務内容も米アップル社のOEM生産のみとなるという。中国主要経済紙「経済観察報」が報じた。
関連の生産業務は今後、賃金水準が深セン市をはるかに下回る重慶市や河南省などの内陸部に移転するほか、台湾本土への復帰や、インド、ベトナムなど新興国にも一部分散させるもよう。現在40万人の従業員を抱える巨大な工場は2年後には、数万人の事業部に縮小されるという。
報道によると、移転の計画は速やかに実施されている。携帯電話機生産部は1ヶ月間で移転を完了させるようにとの上からの要求がある。移転先は北部の天津市。パソコン事業部は中南部の最大都市・重慶と湖北省の武漢市へ。一部の移転先である河南省では、政府がすでに同省に30万人を雇用する工場の設立計画を明らかにした。また、インド、ベトナムなど海外への移転も着々と準備中。
「中国製造業を撹乱」
フォックスコンが中国に抱える80万人の従業員のおよそ半数を有する深セン工場は、かつて深セン市の輸出量の20%を占める製品を生産し、同市に毎年百億元を超える税収をもたらしただけに、大幅な規模縮小は注目されている。
同工場では今年従業員の飛び降り自殺問題が相次いで発生、中国で大きな話題となった。同社は今月、2回にわたる賃上げの結果最終的に100%を上回る賃上げを講じると発表したばかりだった。中国製造業に賃上げの嵐を起こした背景にある同決定に対し、中国メディアは、賃上げを決定した総裁の郭台銘氏を「中国製造業を撹乱している」と報道している。
今年に入り、13人もの従業員が相次いで飛び降り自殺を図り、死者9人(重傷2人、未遂2人)を出したことで、従業員らの過酷な労働環境が注目され、フォックスコンは6月1日、中国工場の従業員の賃金を従来の900元から1200元に、そして5日後に66%増の2000元まで引き上げた。賃上げに百億元前後の支出が計上される見通しとなっている。
同社上層部の話によると、一度目の賃上げは深セン市が最近制定した最低賃金1150元に合わせて行われたもので、自殺事件が起きる前にすでに決まっていたという。しかし、二度目の賃上げは上層部に知らせることなく、社長の郭台銘氏が一人で決定したことだと言われている。
二度目の賃上げの理由について、郭社長は「社会道義を果たすため」と言葉少なげだが、その後同社が深セン工場を大幅に規模縮小することが分かった。
郭社長の真意
フォックスコンの賃上げによって中国の製造業に激震が走った。賃上げの翌日、近隣工場でストライキが起こり、従業員らは「フォックスコンと同額の給料を」と明確に訴えた。しかし、体力のない中小企業はなかなかそこまでできない。実際、上海ではライバル社からの転職希望者が続出しているという。
それはまさに郭社長の狙いだと言えると、中国紙は指摘する。
郭社長は長年、生産委託メーカーが製品の価格決定に影響力がないことに悩んできたという。賃上げでしばらくの間、コスト増で経営が圧迫されるが、これによって競争相手が淘汰され、アップル社など世界的大手企業との取引の中で優位に立ち、製品の価格決定にも口を出すことができるようになると狙っている。情報筋によると、フォックスコンはすでに海外の取引先と価格の見直しを始めているという。
iPadは発売して2ヶ月足らずで200万台の販売数を記録し、入荷待ちの人が長蛇の列を作っているが、アップル社はフォックスコンとの関係をこじれると、出荷がさらに遅れる。
「連続自殺事件で郭社長の長年の願いが叶うかもしれない」と中国紙が皮肉った。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。