【大紀元日本7月29日】「今回の事故は複雑で、我々メディアもどうすることもできない。救助が慌ただしく打ち切られ、現場も封鎖された。鉄道部にはこれほどの権力はない。もっとバックがいるはずだ…」。高速鉄道の脱線事故が起きた浙江省の有力紙・銭江晩報の記者・李林(匿名)さんは本紙にこう語った。
「中宣部からの通達は一日に3回」
李さんが提供した情報によると、国内メディア各社にいま、中央宣伝部(中宣部)からの「通知」が毎日届いており、情報統制が強められている。事故直後にはその通知は半日に一通の頻度だったが、そのうち一日3回来るようになった。「毎日の報道への具体的な指示が出されている」という。
「現段階の指示では、報道規模を縮小し、人間愛や救援活動の成果をテーマとするよう求められている」と李さんは明かし、「不利なことを自分に有利なほうに転じて報道する。これは中国の報道の常套手段だ」と批判した。
この悲劇を喜劇のように報じるやり方は外部のメディアを困惑させている。香港紙・アップルデイリーは27日、「取材手記:悲劇を喜劇に 温州で慈善ショーが上演」との見出しの記事を掲載。記者が事故現場や病院、斎場で目にした多くの悲痛な場面から、テレビではほとんど映されていない実情が明らかにされた。一方では、温州市民による募金活動や献血が大々的に報道され、「温州市で1つの大規模な慈善ショーが上演されている錯覚に陥る」と記事は指摘した。
「死亡者数は絶対に39人を上回る」
「政府は各部門で死亡者数を39人と統一させているが、個人的には絶対にこの数字を上回っていると思う」と李さんは取材でこう言い切った。「微博(中国版ツイッター)上では死亡者数は179人や200人以上との情報が流れている。これは嘘ではない」
李さんの話によれば、地震や土石流のような天災の場合は、当局はそれほど犠牲者の数を操作しないが、今回のような人災となる場合は、数字操作が大掛かりなものになる。「車両が20メートルの高さから落下したんだ。どうなるかは想像に難くない」。犠牲者35人と公表してからも遺体が続々と発見されたため、姑息なやり方として政府は死亡者数を39人に訂正したという。
「100人を超えると特大事故。200人になると特別な事件になる」。李さんはさらに続けた。「我々は微博の情報を信じる。そのほうが透明度があるからだ」。李さんは、このような事故で死亡者数をでっち上げると、当局にマークされ逮捕されかねないため、「誰もこのような嘘を付かない」と指摘。そのため、「微博の信用度が高い」。鉄道部内部の人を含め、いま微博で内幕をつぶやく人が多いという。
今回の事故についてのつぶやきは、「新浪微博」だけで458万件以上に上る。中国人民大学新聞学院の喩国明・副院長も今回の事故後、微博はもっとも内容を重視するメディアであり、多くの報道において「草の根の微博は大手メディア、大手機構にまさる作用を果たしている」と評価した。微博は中国ですでに一定の政治的、社会的効用を備えているという。
「行方不明者はどこだ」
李さんが今回の事故でもっとも不審に感じたのは、行方不明者の数がいまだ公表されていないことだ。「2つの高速列車の乗客は合わせて1500人。多くの行方不明者はどこに消えたのか。これは注目すべきことだ」と李さんは指摘した。
温州市ラジオ局は事故当日の夜、「落下と脱線の6両の車両はほぼ満員。1両の乗客数はおよそ100人」と伝えていた。この600人という数字は、現在公表されている死者39人、負傷者192人と大きな食い違いがある。
中国人民大学の制度分析・公共政策研究センターの舒可心・研究員は、国内メディア「第一視頻」の取材で、「行方不明者の捜索態勢の欠如は救援活動の中における最大の問題」と指摘。行方不明者の数さえも明らかにしていないことは、政府として極めて無責任なやり方だと非難した。
今回の2つの事故列車は切符購入に「実名制」が導入されている。全員の乗客情報を把握している鉄道側は行方不明者を特定することは容易なことだと舒氏は指摘する。しかし、当局は行方不明者の存在にさえ言及することはなかった。
一方、「新浪浙江」が事故後に開設した高速鉄道事故の特集では、58人の行方不明者の情報が載せられている。
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