飢饉、災害、侵略、内乱、革命など、激動の歴史を重ねる中国は、数千年にわたる中華文明の遺産が多く失われた。しかし奇跡的に、「古き良き」中国が残っている場所もある。
水の郷 西塘
浙江省嘉興市にある小さな水郷、西塘。米俳優トム・クルーズが、映画『ミッション・インポッシブル3』で、屋根を駆け抜けたシーンを思い出す人もいるかもしれない。ノスタルジックな景観が美しい西塘は2001年、ユネスコの世界遺産暫定リスト入りした。中国歴史文化名鎮にも登録されている。
西塘では、水に面して家や商店が建ち、122本の水路が走り、モノの輸送や取引は船が使われている。船の接岸にあわせて、それぞれの家に水際までのアプローチがある。
2500年前の春秋戦国時代、西塘は呉国と越国の境となり、「呉根越角」と呼ばれた。街の形がつくられたのは元代のころで、水際に繁華街ができた。明清時代には手工業と商業で栄えた。
八卦をかたどる諸葛村
諸葛村は、浙江省蘭渓市にある諸葛亮孔明の子孫が八卦にしたがって作った八角形の村。4000人の住民の8割が諸葛姓とされる。数百年前の明・清時代の歴史的建築物が良い状態で200以上残っていて、中国国務院の重点文物保護単位に指定されている。
周りを8つの山が囲む盆地に作られた諸葛村は、外敵から見つかりにくく、防衛性が高い。村の中心に、太極図の形に作られた「鐘池」があり、そこから8本の小道が放射状に伸びている。しかし、行き止まりがあり、高低差があるため、方向感覚を失いやすい。たとえ敵が侵入しても、捕らえやすい構造となっている。
伝えられるところによると、浙江省に侵攻した旧日本軍も、すぐ近くの道を通ったものの、この諸葛村を見つけられなかったという。1920年代の国民党の北伐でも、近隣の村が戦乱で荒れるなか、諸葛村は無傷だった。諸葛大師の智慧は、今もなお一族を守っている。
象形文字のある古都 麗江市
少数民族ナシ族の古都である雲南省麗江市は、ミャンマーとインドに接する。標高2400メートルにある。1997年、旧市街世界遺産に登録された。
旧石器時代から、青銅と銀製品を製造していたことがわかっている。
ナシ族は固有の宗教があり、これを表すために、絵画のような象形文字「トンパ文字」を使う。世界で唯一の生きた象形文字としてユネスコ世界記憶遺産に登録されている。
ドゥゲ・ゾン 唐とチベットの交易
長い歴史の中で、チベットは、中国と肩を並べる大国だった。現代、共産党による圧力でチベット文化が破壊されるなか、古都ドゥゲ・ゾンには、1300年前の中国とチベットの文化交易が残されている。
唐の時代、ドゥゲ・ゾンは、チベットと中国をつなぐ茶と塩の道に作られた。また、チベット軍の侵略から守るための要塞もあり、街の名は「石の上に立つ城」の意味が込められている。
チベット文化では尊重の証として白が好まれる。街は白土を使った塗料が壁や道路につかわれ、夜には、銀色に光り輝いた。ドゥゲ・ゾンは「月光の街」と例えられた。
残念ながら、ドゥゲ・ゾンは2014年の大火事で、街の7割を消失した。現在、旧市街地区は封鎖され、観光客が立ち入ることはできない。復興作業が進められている。
(翻訳編集・佐渡道代)
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