「中国の戸籍制度は、県や市といった地方単位ごとにパスポートを発行しているようなもの」。出稼ぎ労働者など、出生地から離れて移り住むものは、「たとえ国内でも『不法移民』並みの処遇となる」。豪州のラジオ局・585AMの番組で、上海に長く滞在していたという中国通のオーストラリア人が、同国のラジオ番組で、中国の戸籍制度の不条理さについて明かした。
この中国通が、中国の国内移住者を「不法移民」とたとえたのは、不平等な戸籍差別のためだ。例えば、彼らは医療保険、労働保険が受けられなくなり、職に就いても地元戸籍者より低い給与になる。子供も地元の公立学校に入学できず、大学入試もその地で受けられない。
中国では、自由に戸籍の転出転入はできないため、別の都市、特に大都市などの戸籍を手に入れるのは困難を極める。そのため、出生地以外の場所に住むならば、この不条理さに一生涯悩まされることになる。
大紀元のコラムニスト・蔡慎坤氏によると、中国や北朝鮮、旧ソ連などの独裁政権が、特有の厳格すぎる戸籍管理制度を導入している。また、中国は、ソ連から学んだ「このいびつな戸籍政策は、旧ソ連の崩壊に伴って姿を消すどころか、中国でますます推進され『産業化』『利益化』の様相も帯びるようになった」と指摘する。
蔡氏の調べでは、58年から実施されている「中華人民共和国戸籍登記条例」には、「国民の戸籍登記に、いかなる付帯条件も設けてはならない」と明確に規定されている。
「国民が自国内を自由に移動することも、住む場所を選ぶこともできない。こうした仕打ちを受けた国民が、国を誇りに思い、帰属意識を持つことができるだろうか。こういう政策を推進する為政者たちのことを恥知らずというよりほかない」と、蔡氏は痛烈に批判した。
経済学者・胡祖六氏も、中国の戸籍管理制度を厳しく指摘している。「80年代以降、人々は自由に移動できるようになったが、それでも仕事や居住地の戸籍をもたない者は二等国民だ。養老保険(注:日本の年金に相当)や医療保険も受けられず、家も買えずにバラックや貧民街に住むしかない。そしてその子供たちも通常の教育を受けられない。戸籍制度は効率的でないうえ、公平さに欠ける。このような戸籍制度は、奴隷制度に等しいと考える」。
(翻訳編集・島津彰浩)
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