核実験やミサイル発射を強行することで国際社会から制裁がくだる北朝鮮。いっぽう、金正恩政権以後、脱北者は半減し、首都ピョンヤンには新しいビルが立ち並び、国内経済は「成長している」と専門家は分析する。米コロンビア大学法学部の韓国法律研究センター研究員アンリ・フェロン(曹咏理)氏は、このたび北朝鮮評論メディア、38north.orgにて分析を示した。下記はその抄訳。
平壌の中心にそびえたつ、105階建ての柳京(リュギョン)ホテル。建設は80年代に始まったが、いまだ完成していない。廃れた三角形のランドマークは確かに目を引くが、実際、街には新たなビルが立ち並び、10年前とは様変わりしている。
2012年に48階建てのタワーマンション18本が平壌市内の中心に登場したとき、外交官らは米マンハッタンにちなんで「ピョンハッタン」と名付け、見かけ倒しだとせせら笑った。しかし、現実に、金正恩政権以後、新しい住宅開発が続いている。
2015年には、朝鮮労働党(WPK)創立65周年を記念して2500棟の新築マンション建設を計画し、最近では2017年、金日成(キム・イルソン)誕生105周年を祝うため3000棟以上が建設された。
金正恩政権以来、平壌では建設ブームが起きている。北朝鮮の非核化に向けた経済制裁は、功を奏しているのか。専門家たちは、北朝鮮が多額の建設コストをどう賄っているのか、探っている。
共産主義の独裁体制下で国家計画経済である北朝鮮の場合、市場経済のそれとはかなり異なる。兵隊や学生は建設現場での労働力となり、材料のセメントは自給自足していると考えられている。
建設事業は見せかけに過ぎず、ゴーストタウンだとの報道もある。例えば、韓国メディア・デイリーNKは、未来の科学者通りのマンションの7割以上(5分の4)は未完成で、建物は構造的に欠陥があると考えられている。2014年に国営の韓国中央通信庁(KCNA)は、「無責任な監督と管理」のため建設中に23階建てのマンションが崩壊したと報じた。
成長する北朝鮮経済
北朝鮮の経済はGDPよりも、食糧生産と貿易統計のほうが信頼できる。国連の世界食糧計画(WFP)が現地で収集したデータによると、北朝鮮の食糧自給率は1980年代のころまで回復した。1996年で約200万トンだったのに対して、2012年の穀物生産量は約500万トン。 慢性的な栄養失調、発育遅延、疾患は著しく減少した。
民間レベルの変化では、食糧、化粧品、電化製品などの新しい家庭用消費財の流通と、亡命者数が半減していることは、経済成長を証明するひとつの説明になるかもしれない。証人が少ないため平壌以外での生活がどれほど変化しているかは不明だが、少なくとも全国に渡って新しい道路が建設され、日本海側の港湾都市・元山と、ロシア国境に近い経済特区・羅先には大規模な都市開発も存在する。
平壌を支える北京
おそらく中朝貿易関係は、北朝鮮が外貨準備高を心配させないほど、緊密なのだろう。中国は北朝鮮の最も重要な貿易相手国であり、最大の外国通貨の「源泉」となっている。
中国税関総署の国・地域別の輸出入統計月報(ドルベース)の貿易統計によると、中朝貿易額は1999年の3.7億米ドルから2016年の53.7億米ドルに増加。厳しい国連制裁にもかかわらず2017年の第1四半期には前年同期より40%近く成長した。
中国が北朝鮮との本当の経済貿易量を明らかにすることはないだろう。上記に示された数値は、密輸、政治的に敏感な特定商品の取引、当然ながら中国の「援助」と投資などが含まれていないため、実際の交易はより「盛ん」とみられている。
こうした「援助」は、政治的理由で実際には支払いが期待されない商品の形を取り、中国の貿易会社が共同出資したショッピングモール改修のように、中国の貿易業者が北朝鮮のウォンで支払いを受け入れ、地元に再投資したりする可能性もある。
費用対効果の高い核開発に注力
北朝鮮の12~100億米ドルに上る国防予算は、韓国(360億米ドル)と米国(6060億米ドル)に対して組まれている。金正恩政権が、安全保障を犠牲にすることなく経済を発展させる唯一の方法は、核抑止力のような、比較的、費用対効果の高い戦力に注力することだ。データの信頼性は高いとは言えないが、北朝鮮の核実験支出は約7~34億米ドルとされている。
(翻訳・齊潤/編集・佐渡道世)
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