国際的な企業を介した、中国共産党政府による台湾への圧力が厳しくなっている。台湾英文新聞によると、中国民用航空局は4月、世界44の航空会社に対し、台湾、マカオ、香港は中国の一部とする表現に変更するよう求める書簡を送っていたことが分かった。
米フォーリンポリシーは、書簡を知る消息筋の話として、通知を受けた航空各社は中国の法律に違反しているため、必ず法律に従うよう要求されたという。また、同紙は、要求に従わない航空会社は「関連のサイバー当局が対応する」と、何らかの圧力を示唆する文言があると報じた。
2018年1月、米ホテルチェーンのマリオットホテルは、同様に表記問題で中国当局に批判の矛先を向けられた。一時的に、中国国内のインターネットからは同ホテルの予約サイトへのアクセス規制がかけられた。ホテル側は「深い反省の意」を示した。
中国民用航空局によると、通知は4月25日に航空各社に送られ、変更期限を5月25日と独自に設けた。同局はこの日、44の航空会社のうち18の航空会社がウェブ上での表記の変更を行ったと発表した。26社が、技術上の理由で最終期限である7月25日までに変更に応じると回答したという。
台湾英文新聞によると、台湾や香港、マカオに関する表記を変更したのは英ブリティッシュ・エアウェイズ、独ルフトハンザ、加エア・カナダなど18社。日本の全日空(ANA)や日本航空(JAL)は、5月までの要求に応じていないが、7月に変更を行うかどうか、明らかにしていない。
台湾外交部(外務省)は、変更した航空各社に対し、迅速に変更を取り消し、中国当局からの要求があったことを説明するよう求めた。
国際航空機構の2017年発表データによると、中国は2022年までに米国を抜いて世界で最も大きな、航空便を使った旅行市場になる。
トランプ大統領「中国式ポリティカルコレクトネス、強要やめるよう求める」
中国による世界の航空会社の表記に関する要求について、ホワイトハウスは5月5日に声明を発表し、「オーウェル的ナンセンス」と批判している。全体主義、社会主義国家による監視と圧力で、仄暗(ほのぐら)い閉鎖社会を表してきた小説家ジョージ・オーウェル氏の作品を指すとみられる。
「中国共産党の政治的見解を、米国市民や民間企業に強要する傾向が強まっている。私たちは中国に対して脅しや強制を止めるよう求めていく」と声明に記されている。
これまで、中国共産党政府による台湾、チベット、香港、マカオに関する表記問題で謝罪、変更に応じた外資企業は米マリオットホテル、日本の無印良品、米ギャップ、米ウォールマート、仏カルフールなど。
「世界に貢献する意思」参加見送られた台湾の蔡総統、WHOに100万ドル寄付表明
「中国と台湾が一つである」を謳う「九二共識」を認めない蔡英文政権が誕生して以来、中国の台湾に対する外交圧力が高まっている。同政権以降、台湾と断交し、中国と国交を結んだ国はサントメ・プリンシペ、パナマ、ドミニカ共和国、ブルキナファソの計4カ国。いずれも中国から多額な経済援助を受けた後、台湾と外交関係を解消した。台湾と外交関係を結ぶ国は過去最少の18カ国となった。蔡英文総統は総統府で談話を発表し、「中国政府に告ぐ」と強い調子で「台湾社会の限界に挑戦するものだ」と非難した。
台湾は、5月にジュネーブで開催される世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)へのオブザーバ参加が、昨年に続き見送られた。
しかし、台湾の蔡英文総統は、WHOに対して100万米ドル(約1億950万円)を寄付する考えを示した。蔡総統は「中国共産党政府との違い」を示すとともに外交上の壁を突破し、「地球人としての義務を果たす意欲」を表すものだとした。蔡総統はSNSで「世界に貢献する決意」として、アフリカのエボラ出血熱対策に役立ててほしいと語った。
(編集・佐渡道世)
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