国交省 航空会社間の便数・ダイヤ調整容認へ

2025/12/05 更新: 2025/12/05

12月5日、国内の航空路線の維持に向けた議論を進めている国の有識者会議で、国土交通省が航空会社同士のダイヤ調整を一定の条件下で認める方針を示した。独占禁止法に抵触する恐れから、これまで航空各社は便数や運航時間帯を独自に設定してきたが、同一路線で複数社が同じ時間帯に便を投入する過当競争が生じ、搭乗率の低下や採算悪化が課題になっていた。

企業の出張需要の減少や燃料費の上昇を背景に、国内線は赤字路線が多く、特に地方や離島を結ぶ路線では維持が難しくなっている。国交省は路線網の維持に向け、2024年5月に有識者会議を設置し、航空会社間の調整のあり方を検討してきた。

関係者によると、国交省は会議で、公正取引委員会の見解を踏まえた新たな方向性を提示する。方針では、便数を減らさないことを条件に、航空会社間で時間帯が重ならないようダイヤを調整することを容認する。地方路線で朝夕に便が集中し、日中の時間帯に空白が生じている現状を踏まえ、時間帯分散による搭乗率向上を図る。

その調整にあたっては、特定の航空会社だけが過度な利益を得る形の調整は認めず、複数の航空会社の合意を前提とする。公取委が調整内容をチェックし、不当な競争制限が生じないよう監視する仕組みも導入する見通しだ。

国交省はダイヤ調整の容認によって、地方や離島の生活路線の維持につながるとみている。日中時間帯に新たな便を設定することで利用者の利便性が向上し、搭乗率が上がれば航空会社の収益改善も期待できる。

同省によると、空港使用料の減免といった公的支援を除いた場合、国内主要6社の国内線事業は、2025年3月期決算で営業利益が実質全社赤字だった。人件費や整備費の高騰も重なり、従来の競争構造では路線網を維持できない状況が続いている。

ただし、ダイヤ調整には課題もある。競争が弱まることで運賃の高止まりを招くおそれがあるほか、利用者の多い朝夕の便が日中へ移されれば利便性が下がる可能性も指摘される。複数社の合意が前提となるため調整が進みにくい場合があり、大手と地方航空会社の間で調整の負担や効果に偏りが生じる懸念も残る。

有識者会議は引き続き関係者のヒアリングを行い、来年5月をめどに制度見直し案を取りまとめる方針だ。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。
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