防衛省がまとめた日本の防衛政策や世界各国の軍事・防衛現状に関する報告書、平成30年版防衛白書は28日の閣議で了承された。同報告書では、中国国内政治・経済情勢などを挙げながら、急速な軍事力強化や軍事的脅威をあらためて指摘した。また日米軍事同盟の重要性を強調した。
同報告書は3部に分かれている。第1部第2章の「諸外国の防衛政策など」では、防衛省は米国、朝鮮半島、中国、ロシア、オーストラリア、欧州など世界各国・地域の防衛状況を紹介した。なかでも、中国については34ページと最も長い。南シナ海や東シナ海などで軍事力を急速に強化する中国当局への危機感を表した。
白書は、中国国内政治・経済現状を紹介する際、中国の人権問題、中国共産党幹部の汚職・腐敗のまん延、貧富格差の拡大、物価上昇、環境汚染などさまざまな問題が「顕在化している」と指摘。
また、中国社会の急速な高齢化に伴い、年金などの社会保障にも問題が起こると予想されているとし、中国共産党の「政権運営を不安定化させる要因が拡大・多様化の傾向にある」との見方を示した。
防衛省は過去と同様に、中国当局の軍事および安全保障に関して不透明だと強調した。また、中国当局は軍の実戦力強化のほか、「世論戦」・「心理戦」・「法律戦」を軍の政治工作の項目に加えたため、「軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させている」という。
防衛省は同報告書において、近年尖閣諸島などを含む東シナ海や西太平洋など日本周辺海空域で活動を拡大し、活発化している中国当局について、「既存の国際秩序と相反する独自の主張」をし、「一方的な主張を妥協なく実現しようとする」と非難した。
白書によると、中国は日本を含むアジア太平洋地域を射程内に収める中距離弾道ミサイル・準中距離弾道ミサイル、DF-21やDF-26を保有する。DF-21などは通常のミサイルと核弾頭を両方搭載可能だという。台湾を狙って配備されている短距離弾道ミサイル、DF-16やDF-15、DF-11などについて、日本の南西諸島もその射程に入っているとの懸念を示した。
防衛省は、中国軍が情報作戦において、人工衛星・コンピューター・ネットワークの利用やサイバー攻撃能力を強化し、宇宙空間における軍事的能力も向上させているとした。敵側の宇宙利用を妨害するためのレーザー兵器や対衛星兵器などを開発している。
一方、中国当局による台湾への軍事行使に関して、防衛省は、中国軍が海・空において、台湾軍より圧倒的な優勢を持つとしながら、陸軍力に関して台湾本島への着上陸侵攻能力は「現在限定的だ」との見方を示した。このため、中国側が台湾での陸上戦力を高めるため、近年大型揚陸艦の製造を急いでいるという。
米ボイス・オブ・アメリカ28日の報道によると、海上自衛隊潜水艦部隊で艦長を務めた山内敏秀氏は、中国当局が将来、世界範囲に軍事力を拡大させた後に台湾への武力行使を実行すると推測した。同氏が、現在中国が台湾に侵攻をすれば、即座に米国からの軍事攻撃を受けると分析した。
(翻訳編集・張哲)
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