中国人民大学の学者が講演、GDP実質マイナス成長と言及 「データを見てハラハラ」

2018/12/19 更新: 2018/12/19

中国マクロ経済学者で、人民大学国際通貨研究所理事兼副所長の向松祚(コウ ショウソ)氏は16日、同大学で行われた改革開放40周年経済フォーラムで講演し、「経済のデータを見てハラハラする」と中国経済の実態について衝撃的な言葉を発した。

GDP成長率、実質マイナスとの統計も

向氏は、国内総生産(GDP)の成長率6.5%という政府発表のデータに異議を唱えた。同氏が入手した重要研究機関の内部研究調査では、今年の中国GDP成長率はわずか1.67%と示された。また、「別の試算方法では、今年のGDPがマイナス成長であることが分かった」

向氏は「中国経済は明らかに下振れリスクに見舞われている」と指摘した。景気の鈍化を招いた最大の要因は、「米中通商摩擦」「中国民営企業の大幅な投資減少」と「民営企業家の悲観的心理拡大」にあると分析した。

同氏は中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の最高財務責任者孟晩舟氏の逮捕について触れた。「アメリカとその同盟国はファーウェイ排除に躍起になっている。今の米中対立は単なる貿易問題ではなくなった」との認識を示したうえ、「国際社会での発展チャンスは速いスピードでしぼんでしまった」と述べた。

さらに、「米中関係は今、岐路に立たされ、重大な試練に直面している」とし、中国は解決の糸口を現段階で掴んでいないと指摘した。

また、中国政府系メディアは今年末から、「私有制は退場すべきだ」とあおり、民営企業家が心理的な打撃を受けた。民営企業にとって最大の問題は「融資難」ではなく、「政策の不確実性と、当局を信用できないこと」と指摘した。

中国が直面する国内外の課題

向氏は、中国当局は対内では、経済成長の急激な減速、システミック金融危機、貧富の格差の拡大、政府の債務危機、企業家や投資家の心理改善、(半導体など現在外国企業に頼る)主要ハイテク技術の研究開発での突破という6つの課題がある。

対外では、米中通商摩擦の解決、市場開放、国際収支の管理・人民元為替相場の安定化、など3つの課題に直面している。

向氏は、10月の経済指標では、中国の自動車・不動産消費、輸出の低迷が示されたと指摘した。同氏は、国内投資と輸出が悪化するなか、消費主導の成長モデルへの転換も失敗しているとの見方を示した。

中国共産党中央政治局は12月13日、国内経済情勢について「雇用の安定化、金融の安定化、貿易の安定化、外資導入の安定化、国内投資の安定化、景気見通しの安定化」の6つの主要任務を再強調した。

向松祚氏は、さらに「元の為替相場の安定化、外貨準備の安定化、住宅価格の安定化と3つの任務を加えなければならない」と話した。

企業債務と株市場

向氏によると、今年1~9月までで企業の債務不履行(デフォルト)規模は1000億元(約1兆6000億円)を超えた。中国当局の試算では、今年1年間の企業のデフォルトは1200億元(約1兆9200億円)以上になる。

現在、国有企業や民間企業が相次いで倒産している。米フォーチュン誌に世界500強企業の1つと評価された中国国有天津渤海鋼鉄集団は、すでに経営破綻した。向氏は、同社の実際の負債規模は、1920億元(約3兆720億円)ではなく、2800億元(4兆4800億円)だと主張した。

いっぽう、2018年の中国株式市場について、向氏は、株価の下落によって株式市場の時価総額、7兆元を失ったと発言。「各銘柄を見ると、これまでの最高値と比べて、83の銘柄が9割も暴落した。1018の銘柄が8割、2125の銘柄が7割、3150銘柄が5割とそれぞれ急落した」「この急落ぶりは1929年のウォール街の大暴落に匹敵する」株式市場の低迷の主因は、中国上場企業の収益の悪さにあるという。

向松祚氏は、中国の経済減速の根本原因は、以前から続いた拡張的経済成長モデルによる「脱実向虚(実体経済から脱し、非実体経済に多くの資金が流れ込む)」にあるとの見方を示した。「上場企業の経営者らは本業ではなく、不動産、金融商品の投資に熱心だった」

中国経済全体は「非実体経済に基づいている。レバレッジに頼っている」とした。

講演の動画はソーシャルメディアで拡散され、大きな反響を呼んだ。一部のネットユーザーは「真実を暴いた」と支持した。しかし、現在中国語版ツイッターの「新浪微博」などでは、同動画をみることはできない。

香港メディア「蘋果日報」18日付によれば、向松祚氏の講演は中国当局の「うそ」を暴いたため、中国共産党中央宣伝部は、動画の削除を命じた。

(翻訳編集・張哲)

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